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インテリアデザイン・建材のトレンドを伝えるメディア Presented by 商店建築

エースホテル京都

2021.07.01 | REPORTSpecial Feature

「エースホテル京都」1階のホテルロビー。アジア初出店となるエースホテルの内装計画は、これまでもエースホテルのインテリアデザインを手掛けてきたアメリカのコミューン・デザインが担当。隈研吾建築都市設計事務所による外装の木組みは内部へと連続し、それに呼応するようにコミューン・デザインがスチールパイプを組んだ軽やかな照明デザインで施設デザインとホテルデザインを調和させた。ケトルのサインがアイコニックな日本初出店のカフェ「スタンプタウン」(写真右奥)は「新風館」の保存棟に位置する

『商店建築』2020年6月号に掲載したものを再編集したものです

世界のアーティストが空間に溶け合う ダイナミックな共用空間と遊び心あふれる客室

銅を叩いて仕上げたレセプションカウンター。カウンター周りの壁面にはショップコーナーが設けられた
銅を叩いて仕上げたレセプションカウンター。カウンター周りの壁面にはショップコーナーが設けられた


信楽焼タイル貼りのエレベーターホール。奥はファッションブランド・ヒステリックグラマーの北村信彦氏による作品
信楽焼タイル貼りのエレベーターホール。奥はファッションブランド・ヒステリックグラマーの北村信彦氏による作品


カフェ「スタンプタウン」の店内。カウンターバックの壁面タイルには、色味を確認するための試作タイルを使用した
カフェ「スタンプタウン」の店内。カウンターバックの壁面タイルには、色味を確認するための試作タイルを使用した

西洋と東洋のデザインを融合し
世界各国の旅行者を迎える

 「エースホテル京都」の内装をデザインするにあたって掲げたコンセプトは「East Meets West」である。エースホテルが得意とするアーティストとのコラボレーションをここでも実現させるため、5年近くの歳月をかけてアメリカ西海岸や地元京都のアーティストおよび職人を探した。


コラボレーションはアートのみならず、内装仕上げ材や照明器具にも見られる。例えば、レストランの間仕切りパネルはAlexander Kori Girard(アレクサンダー・コーリー・ジラード)氏の作品で、床のモノクロのモザイクタイルの柄も同氏がデザインした。京都に古くから伝わる伝統工芸のひとつである金網細工は、ルーフトップバーや2階のバーの照明に採用。漆喰、木材、和紙などの日本古来の有機的な内装材と西洋のデザインを掛け合わせることで、純和風のデザインから離れ、日本人のみならず世界各国の旅行者を迎える温かみと、懐かしさを感じる空間を目指した。


客室は白い漆喰壁や木の天井縁、畳、簾などの和の装いに、ミナ ペルホネンの華やかなカーテンや照明がアクセントとなっている。


 1階ロビー床の墨入りコンクリートや特注の信楽焼タイル、銅、真鍮などの無機質な材料にもハンドクラフトの味わいを残した。1階コーヒーショップのカウンターバックのタイルは、本来なら捨ててしまう色味を確認するための試作タイルであり、二つとして同じものはない。1階レセプションカウンターや2階バーの天井に使われている銅は経年変化していく素材である。年月をかけて「エースホテル京都」を楽しんでいただきたいという気持ちを込めている。〈コミューン・デザイン〉


メキシカンレストランは、中2階と2階に客席が分かれる。中2階には銅板貼りのDJブースが設けられた
メキシカンレストランは、中2階と2階に客席が分かれる。中2階には銅板貼りのDJブースが設けられた


同店2階のカウンター席。天井に貼られた銅板が景色を複雑に反射する。経年変化により風合いが変化していく
同店2階のカウンター席。天井に貼られた銅板が景色を複雑に反射する。経年変化により風合いが変化していく


同店2階のカウンター席からソファ席を見る。天井の木組みとスチールのパイプが1階から中2階、2階へと連続する
同店2階のカウンター席からソファ席を見る。天井の木組みとスチールのパイプが1階から中2階、2階へと連続する

ルーフトップバーを持つ3階のイタリアンレストラン。カウンターバックには薪釜が設置された
ルーフトップバーを持つ3階のイタリアンレストラン。カウンターバックには薪釜が設置された


同店のカウンターからルーフトップバー方向を見る。天井には京都の金網細工の技術を用いた照明が吊られた
同店のカウンターからルーフトップバー方向を見る。天井には京都の金網細工の技術を用いた照明が吊られた


新風館の中庭を一望できる同店のルーフトップバー
新風館の中庭を一望できる同店のルーフトップバー


同店の客席。タイル貼りの床とパーティションにアーティスト、アレクサンダー・コーリー・ジラード氏が手掛けたパターンが広がる 
同店の客席。タイル貼りの床とパーティションにアーティスト、アレクサンダー・コーリー・ジラード氏が手掛けたパターンが広がる 


バンケット前のホワイエ。絵巻のようなアートや細かい寸法で割り振られた壁面のパターンが和の要素を感じさせる
バンケット前のホワイエ。絵巻のようなアートや細かい寸法で割り振られた壁面のパターンが和の要素を感じさせる


保存棟2階の客室前廊下。外装の骨太な木組みが内部にも連続する。右手の開口部からは中庭が見下ろせる
保存棟2階の客室前廊下。外装の骨太な木組みが内部にも連続する。右手の開口部からは中庭が見下ろせる


保存棟3階、通路を挟みベッドを左右に振り分けた客室「ヒストリックツイン」。3階の客室には既存開口部のアーチ形状がそのまま表れている
保存棟3階、通路を挟みベッドを左右に振り分けた客室「ヒストリックツイン」。3階の客室には既存開口部のアーチ形状がそのまま表れている


既存建物の出窓を活かした「エーススイート」。和紙貼りのイサムノグチのペンダントライト、ミナ ペルホネンのカーテンなど、和の素材や日本のアーティストとコラボレーションした家具を配置した
既存建物の出窓を活かした「エーススイート」。和紙貼りのイサムノグチのペンダントライト、ミナ ペルホネンのカーテンなど、和の素材や日本のアーティストとコラボレーションした家具を配置した


ふすまの裏側に備えられた「エーススイート」のミニバー
ふすまの裏側に備えられた「エーススイート」のミニバー


同室の寝室。各客室の壁面には、染色工芸家・柚木沙弥郎氏によるアートが飾られている
同室の寝室。各客室の壁面には、染色工芸家・柚木沙弥郎氏によるアートが飾られている


保存棟に位置する「ロフトスイート」。音楽はエースホテルにおいて重要な要素であり、客室にはターンテーブルやギターが置かれている 右/水まわりは、木を多用したクリーンな設え。アメニティーには日本のトータルビューティーサロンuka(ウカ)がエースホテルのために制作したものが備えられる
保存棟に位置する「ロフトスイート」。音楽はエースホテルにおいて重要な要素であり、客室にはターンテーブルやギターが置かれている 右/水まわりは、木を多用したクリーンな設え。アメニティーには日本のトータルビューティーサロンuka(ウカ)がエースホテルのために制作したものが備えられる

地域コミュニティーに溶け込む 「フレンドリーな場所」

 「エースホテル京都」が建つこのエリアは、伝統と新しい可能性、ビジネスと住民の生活が混合しており、街を行き交う世代もさまざまで、観光客はもちろん、住民にとっても価値がある特別な場所だと感じています。まずはこの場所の歴史に敬意を払いながら、伝統あるコミュニティーに溶け込んでいき、これまでエースホテルが培ってきた愛情と寛容さを持った場所づくりをしていければと考えています。


エースホテルは「フレンドリーな場所」です。誰でも出入りが可能なパブリックエリアでは、音楽やアートイベントなど、多くの文化イベントが日々開催されます。国際的で多種多様な人々が、ここ「エースホテル京都」に集まり、創造的な体験ができる場になること、ひいてはこの場所の伝統や文化を持続させることに貢献できればと考えています。
〈エースホテル京都 総支配人 ニコラス・ブラック〉

「新風館/エースホテル京都」data

工事種別:新築 全面改装
用途地域地区:商業地域
建ぺい率:実効80.23%<制限100%
容積率:実効372.22%<制限653.72%
構造と規模:S造+SRC造 地下2階地上7階建て
敷地面積:6384.73㎡
建築面積:5122.12㎡
床面積:2万5610.97㎡/地下2階188.67㎡ 地下1階4230.07㎡ 1階4783.02㎡ 2階4464.79㎡ 3階3476.86㎡ 4階2009.63㎡ 5〜7階各2112.64㎡ RF120.01㎡
工期:2017年8月〜2020年2月
施工協力:厨房機器/北沢産業 音響設備/システムエンジニアリング ICTシステム/NTT西日本・NTTコミュニケーションズ 家具・什器/J.フロント建装(客室)
 プラス(パブリック) サイン/びこう社


営業内容
〈新風館〉
開業:2020年
営業時間:物販店/午前11時〜午後8時 飲食店/午前11時〜午後11時(一部店舗は除く)
電話:(075)585-6611
経営者:NTT都市開発㈱
主なテナント構成:20店舗(映画館1店舗 グルメ、スイーツ6店舗 ファッションライフスタイル13店舗)
〈エースホテル京都〉
開業:2020年
チェックイン/アウト:午後3時/正午
電話:(075)229-9000
経営者:UDホスピタリティ・マネジメント㈱
運営者:エースホテル
所有者:NTT都市開発㈱
客室数:213室
主な付帯施設:レストラン、バー&ラウンジ、コーヒーショップ、ギャラリー、バンケットルーム(1室)、ミーティングルーム(3室)


主な仕上げ材料
屋根:増築建物/アスファルト防水下地軽量コンクリート
 保存建物/コンクリート下地露出アスファルト防水 屋上緑化
外壁:増築建物/墨入りPCカーテンウォールフッ素樹脂クリア塗装 アルミサッシ、カーテンウォール・電解2次着色 ST溶融亜鉛メッキリン酸処理 アルミルーバー・硫化いぶし調フッ素樹脂焼き付け塗装 押し出し成型セメント板フッ素樹脂塗装 ST溶融亜鉛メッキリン酸処理下地亜鉛アルミ合金メッキ+クリンプ金網特殊ポリエステル樹脂焼き付け塗装 保存建物/コンクリート下地既存色合わせ磁器質タイル貼り
外部柱:増築建物/アルミパネル硫化いぶし調フッ素樹脂焼き付け塗装
サイン:ST溶融亜鉛メッキ金網アクリル樹脂焼き付け塗装 SUS切り文字アクリル樹脂焼き付け塗装
床:墨入りコンクリート下地アクリル樹脂系クリア塗装防滑仕様
壁:STサッシ/内部・合成樹脂塗装 外部・フッ素樹脂塗装
天井:ケイカル板下地合成樹脂EP 木組み/杉材+一部不燃木浸透型木材保護塗料塗装
照明器具:LED照明
〈エースホテル京都〉
床:直ならしコンクリート現し カーペット敷き(川島織物セルコン) ハンドタフテッドラグ(PURE WOOL/東リ) 客室/オーク材フローリング貼り(矢島木材乾燥) レストラン/玄昌石貼り オーク材フローリング貼り(矢島木材乾燥) 墨入りコンクリート
幅木:木幅木
壁:PB+ケイカル板下地クロス貼り(シンコール) 内装薄塗り材(エスケー化研、日本化成) ドレープカーテン(ミナ ペルホネン) 簾(横山竹材店、チェルシーインターナショナル) レストラン/不燃木うづくり仕上げ(中部メンテナンス) 不燃和紙貼り(KAMISM) 木毛セメント板貼り(竹村工業) 不燃木突き板貼り(北三) 磁器質、せっ器質タイル貼り(LIXIL名古屋モザイク工業
 パンチングメタル貼り(奥谷金網製作所)
天井:PB+ケイカル板下地クロス貼り(シンコール) EP レストラン/銅板貼り(能作) 不燃木突き板貼り(北三) 裏打ち材吹き付け(グライト/グライト工業)
家具:客室家具/タモ材練り付け 積層合板木口現し
什器:パブリック什器/ホワイトオーク材+パンチングメタル+強化ガラス(プラス)
照明器具:客室天井、壁付け照明/リネン+オリジナルテキスタイル+真鍮(flame) 客室、パブリック照明/和紙+フロストガラス+真鍮+ネオンLED(モデュレックス) 

関連記事はこちら⇒

ザ ノット東京新宿/山路哲生建築設計事務所 Y.K.D. デザインスタジオ グラム(『商店建築』2019年2月号掲載)

ザ ライブリー 大阪本町/ザ・レンジデザイン トリプル 日企設計(『商店建築』特別企画増刊「NEW STANDARD HOTEL」掲載)

『商店建築』2020年6月号はこちら ⇒

デンタル表紙画像

商店建築2020年6月号

2020年05月28日発売
¥2,138
Ace Hotel Kyoto
ザ・ホテル青龍 京都清水
ザ・ひらまつ 京都
ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋
業種特集1/カフェ
業種特集2/レジデンス共用空間のデザイン

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