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武石正宣氏に聞く、ライティングデザインの未来

2016.12.05 | INTERVIEW

商業施設を始め、ホテル、ミュージアム、オフィス、ランドスケープ、イルミネーションなど、さまざまなシーンの光をデザインするICE都市環境照明研究所を率いる武石正宣氏。
北米照明学会国際照明デザイン賞など数多くの受賞歴を持つ氏に、照明デザイナーとして大切にしていることや最新事例について聞くと共に、ミネベアの照明シリーズ「SALIO(サリオ)」についてプロフェッショナルの視点からの意見を語ってもらった。

意識すべき三つの“間”

「照明デザインには、意識すべき三つの“間”があります」。インタビューの冒頭でまず武石氏は、そう語った。


「床、壁、天井で構成された空間は、空の“間”と書きます。その空間で人がどう過ごすのかを考えていくことが、私たちの仕事です。つまり、その空間の目的に適った照明をデザインしていかなければならないということです。


次が人間です。人間も人の“間”と書きます。人が他人と時や場を共有し、社会性を持つことで人間となります。光の存在には人と人との距離を調節する役目があり、また人間の目は直接的な光を嫌うため、適切な心地良い明かりでなければならないでしょう。


そして、最後が時の“間”、そう、時間です。人間の目は、朝起きてから夜眠りにつくまでに生理的な変化をしています。例えば、真夏の海辺だと照度は10万ルクスを超え、夜の月明かりはたったの4ルクスだと言われています。どちらも人間の目で捉えることができますが、夜中にいきなり10万ルクスの光を照らされると、目の前は真っ白になってしまうはずです。人間の目は夕方に絞りが切り替わると言われていますが、時間の変化と照明の関係にも常に気を配っています。


これら三つの“間”は相互に干渉し合っているため、これにコストなどの与条件とテクノロジー、流行といった情報を加味して回答を見つけていくのが照明デザインだと私は考えています」

演出過剰としない適切な灯り

武石氏は、星野リゾートが運営する「星のや」の照明デザインをこれまで手掛けてきた。2016年7月、東京・大手町にオープンした「星のや東京」のファサードは麻の葉をモチーフとしたアルミキャストパネルで覆われ、そのパネルを照らす光のグラデーションによって、周囲のオフィスビルにはない趣ある外観を浮かび上がらせている。


レストラン階のエントランススペースでは、地層を表現したアートのような壁を適度に見せるために、器具自体は黒い天井と同化させたリニアなウォールウォッシャーを天井面に設置し、平行光を照射。わずかな外光が壁際に差し込んでいるような効果を生み出している。床の暗さを維持しながら、訪れるゲストが自然と壁に視線を向けるような程良いライティングは、演出過剰にならないように留意したものだという。


「10年程前に照明デザインを手掛けた『星のや軽井沢』から共通するリズム、明るさと暗さの感覚のようなものは意識しています。その中で、東京の中心に『星のや』があったらというコンセプトで考えていったのが今回のプロジェクトでした。大手町の趣をうまく光でも取り込むことができたのではないでしょうか」


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「星のや東京」地下1階レストランのホール。地層をダイナミックに表現した壁や花崗岩のオブジェを全体が明るくならないよう丁寧に照らしている (設計・建築:三菱地所設計、NTTファシリティーズ/旅館計画・内装・外装デザイン協力:東 環境・建築研究所/ランドスケープ設計:三菱地所設計、ランドスケープデザイン/監修:オンサイト計画設計事務所/運営:星野リゾート/撮影:ナカサ&パートナーズ)


また、「星のや」同様に継続的に照明を手掛けている東京・白金台の「八芳園」のバンケット改修計画では、施設が持つストーリーを意識して照明デザインを進めていったという。インテリアを設計したのは、一連のエントランスロビーや別棟の白鳳館などと同じく橋本夕紀夫氏である。


「3階には白を基調としたバンケット、和のイメージの強いバンケット、そして、その中間にホワイエがあります。『CHAT(チャット)』と名付けられた白い空間では、橋本さんのデザインによる折り紙のような真っ白い光天井が象徴的に設えられました。天井内に仕込んだバーの裏側に照度をコントロールできるLED光源を配し、折り紙のような天井造作を邪魔せずに演出的な光を与えるために、造作間のスリットにスポットライトを設けました。同時に計画されたもう一室では、繊細な和風の格子を用いた天井デザインがなされており、対を成すような光のデザインとなっています」


バンケットの照明効果はもちろん大切だが、その空間だけで考えるのではなく、施設の入り口からホワイエを通過しバンケットに至るシークエンスを考慮して光を構築するという武石さんの言葉からは、人の動きを大切にする姿勢が垣間見える。インテリアデザインの魅力を伝え、そこで過ごす人に最適な光を用意する。シンプルなことながら、「星のや」「八芳園」という二つの事例からは、過剰に演出しないことで豊かな時間を生み出しているように感じられる。


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この2016年9月にリニューアルした3階バンケット「CHAT(チャット)」。白い折り紙のような立体的な光天井とスリット内のスポットライトを使い分けている (設計:橋本夕紀夫デザインスタジオ/経営:(株)八芳園/撮影:ナカサ&パートナーズ)

未来への期待

同時にいくつものプロジェクトを手掛け、国内外の照明器具にも精通する武石氏にミネベアのLED照明「SALIOT(サリオ)」の印象を聞いた。


「吹き抜けや高天井のフロアでは、その時々の状況に合わせて照明を切り替える必要が生じます。遠隔操作でX軸とY軸の照射方向、そして配光角度を変えることができる47Wのスポットライトも魅力的ですが、私は見た目には通常のダウンライトのようで照射方向を操作できるダウンライトに特に興味を持っています。すぐにサンプルを借りて実験したいと思っています」


また、照明を取り巻く現在の状況については「LED照明は広く一般化し、いま変革期を迎えていると思います。音楽がレコードからCDに切り替わり、更にはiPodやiTunesが音楽の楽しみ方を変えていったように、照明にもデジタル化の大きな変化があるべきで、従来の照明器具の形にとらわれない進化があると思っています。


これまでの照明器具は交流電源が前提でしたが、直流によるLEDの照明制御やセンサーの活用など、新しい可能性はたくさんあります。照明器具は新規参入ですが、機械分野で高い技術力持つミネベアには、そうした私がこれまで見たことのないものを見せて欲しいですね」と大きな期待を寄せていた。


最新の角形デザインのスポットライト「サリオ キューブ」。2016年度のグッドデザイン賞を受賞した
最新の角形デザインのスポットライト「サリオ キューブ」。2016年度のグッドデザイン賞を受賞した


照射方向をスマートフォンから遠隔操作できる「SALIOT」の小型ユニバーサルダウンライト
照射方向をスマートフォンから遠隔操作できる「SALIOT」の小型ユニバーサルダウンライト


ブティックなど店舗での活用が期待される、照射方向・配光角度可変の小型のスポットライト
ブティックなど店舗での活用が期待される、照射方向・配光角度可変の小型のスポットライト

武石正宣
1959年生まれ、横浜出身。多摩美術大学建築科卒業。海藤オフィス チーフデザイナーを経て、ICE都市環境照明研究所を設立。北米照明学会国際照明デザイン賞、ナショップライティングアワード、パナソニックランドスケープライティングアワード、ほか受賞多数。主な仕事に、「表参道AOビル」、「八芳園白鳳館」の照明計画、一連の「星のや」の照明計画など。

ミネベア(株) 照明製品統括部

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