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働く場は「居心地投資」と「会話のデザイン」の時代へ オフィス革新の鍵は一杯のコーヒーから/

2025.11.28 | レポート

We Proudly Serve Starbucks® コーヒープログラム

6月4日、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された「オルガテック東京2025」にて、「商店建築トークイベント─これからのオフィスづくりは“居心地投資”と“会話のデザイン”の時代へ!」が開催された。イトーキの岡純平さん、コクヨの青木耕二さん、丹青社の安元直紀さんが登壇し、本誌編集長の塩田健一がモデレーターとなり、社員同士の交流を促す最新のオフィス事例を紹介した。更にネスレの橋本研吾さんも加わり、「We Proudly Serve Starbucks®コーヒープログラム」を導入した前後で、会話の数や質がどう変化したかの検証結果を示した。スターバックス®の香り立つ味わいがオフィスにあることで、社員の交流は自然に深まり、日常の会話は新しいアイデアへと変わっていく。オフィスが再び輝きを増す、その可能性を語り合った。

オフィスでの 「会話の価値」が変わってきた

塩田 今回の座談会は「これからのオフィスづくりは“居心地投資”と“会話のデザイン”の時代へ」と題して議論していきます。まずは、社員同士のつながりやエンゲージメントが生まれる鍵として注目されている「We Proudly Serve Starbucks®コーヒープログラム」(以下、WPS)についてお聞かせください。
橋本(ネスレ) 「WPS」は、皆さんがよくご存知のスターバックスのコーヒー体験が、オフィスや大学、ホテルで味わえるサービスプログラムです。スターバックスのコーヒー豆を使用した、フルオートのマシンで、本格的なカフェラテやカプチーノがお楽しみいただけるプログラムです。おかげさまで、2019年のサービス開始から、さまざまな企業や大学、団体への導入が進んでいます。とりわけオフィスでの導入が多く、利用者の方々からは、「ハイブリッドワークが進む中で、出社のモチベーションになる」「コーヒーを持って会議に臨むと、自然とアイスブレイクができる」「コーヒーがあると緊張感がほぐれて、スムーズに会議がスタートできる」といった声が届いています。
塩田 では、座談会に移りましょう。岡さんは、オフィスにおける会話について、どのように感じていますか。
岡(イトーキ) 今、「成果志向」から「関係構築志向」へ会話の価値が変化してきていると感じます。最近、お客様からいただくRFP(提案依頼書)を分析すると「出社したくなるオフィス」という言葉がすごく多くて。中身を見ていくと、社内外コミュニケーションの充実やイノベーション促進、この二つがやはり大きなテーマになっていて、もうオフィスにとって「当たり前の標準装備」の域に達しています。だからこそ会話の役割も変わってきていて、以前は「業務を遂行するための会話」だったのが、今は「関係づくりの会話」にシフトしています。チャットによる報告・連絡・相談の機会が増えたからこそ、出社した時には信頼関係やコミュニティーをどう築くかが重要になっている。設計でも「何を話すか」より「どんな気持ちや状態で話せるか」、つまり、いかに居心地に作用する環境をつくるが大事になってきていると感じています。青木(コクヨ)本当にそうですよね。不確実で先が読めない時代背景の中で、オフィスにおける会話の価値をどう変えていくか、ということは私たち設計者にとって大きなテーマです。これまでのオフィスは、いわゆる「ファクトリースタイル」でした。上司が決めたことを部下が実行すれば成果につながる、そうした仕組みが有効だった時代です。しかし現在は、答えが一つに定まらない。だからこそ、上司と部下が共に考え、共に答えをつくっていく「スクラムスタイル」が求められています。変化を前提にしながら答えを更新していくこと、それが今のオフィスで強く意識されていると感じています。更に「ザイオンス効果」も示唆的です。接触回数が増えるほど、相手への理解や好感度は深まっていく。結局のところ、オフィス設計や運用において鍵となるのは、この「接触の回数」をいかに増やすか。そこに工夫を重ねることが、会話の価値を高めるうえで不可欠になっているのです。安元(丹青社)「関係づくりの会話」や「スクラムスタイル」、「接触回数を増やす」ために、WPSを導入するのも、有効な手段の一つでしょう。以前、ネスレと弊社が協働でオフィスでの実証実験を行いました。WPSのサービス導入前後で、社員の行動や会話がどう変わるかを、カメラや音声分析で調査したんです。その結果、30秒以上オフィス内に滞留する人数は、導入前の約4.7倍に増加。平均発言数は1.2倍、平均発話人数は約6.7倍になりました。更に生成AIで会話の質を分析したところ、発信内容もハッピー度が10ポイント、ポジティブ度が7.4ポイント増加。約40%の改善が見られ、会話の量だけでなく質も高まっていることが分かりました。


イトーキのオフィス「ITOKI DESIGN HOUSE」(撮影/神宮巨樹)

エントランスをカフェ一体の開放的な空間とし、屋外用の素材を用いて外のような雰囲気を生み出し、ゲストの緊張を低減。サーカディアンリズムに基づく照明で時間帯に応じた心地良さを演出する。

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岡純平(おか・じゅんぺい)
イトーキ
ワークスタイルデザイン統括部
ワークスタイルデザインラボ
ルーム長 クリエイティブディレクター


青木さんが設計を手掛けた「Creative Center,Sony Group Corporation」(撮影/ナカサ&パートナーズ)

ソニー本社にあるデザイン室のオフィス。フロア中央に太い動線を貫き、通行時に他部署の活動が目に入り、自然な交流による接触機会を増やす仕組みをつくった。

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青木耕治(あおき・こうじ)
コクヨ
ワークスタイル事業本部
クリエイティブデザイン部 部長
ビルエリアリノベーション室 室長


安元さんが設計を手掛けた「京セラ みなとみらいリサーチセンター」(撮影/御園生大地)

社内外共創の拠点としてのオフィス。港や航海、羅針盤をモチーフにした物語性で行動意欲を喚起。路面に面したワークスペースを「見せる」計画とし、活動のにじみ出しで地域とつながる。

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安元直紀(やすもと・なおき)
丹青社
デザインセンター エクスペリエンス
スペースデザイン局
ワークプレイスデザインユニット
デザイングループ グループ長


未来をつくる「一杯の力」

青木 我々のオフィス「THECAMPUS」(23年11月号)でも、WPSを導入しています。利用者アンケートの回答をみると、「利用しているフロアからの移動」が79%、「2人以上で誘い合って利用したことがあった」が60%、「カフェ利用後に周囲の社員と立ち話をした」が34%という結果からも、WPSが社員同士の接触機会の誘発に大きく関与していることが見えてきました。私自身も、WPSでのコーヒーブレイクは、他の社員とのコミュニケーションのきっかけになっていると実感していますし、今回のテーマにもある「居心地投資」や「会話のデザイン」にも貢献できるサービスだと思います。
 私たちのオフィス「ITOKIDESIGNHOUSE」(25年6月号)では、11~13階の専有フロア中央、12階の階段脇にWPSを設置し、社員が自然に立ち止まる仕掛けをつくりました。オフィス設計のテクニックとして、居心地の異なる複数のスペースを用意することで、滞在や接触の選択肢を増やし、会話を促す場をつくるようにしていますが、WPSは人が集まる起点となり得る重要なコンテンツと言えます。
橋本 近年のオフィスでは、移転時に「スターバックスのコーヒーが飲める」という点が若手社員の関心を引くなど、会話や接触機会のデザインは単なる総務の仕事ではなく、経営課題の一つとして認識されるようになっています。オフィスの空間設計が社員の交流やポジティブな働き方に直結することが、こうしたデータからも示されています。
塩田 「居心地投資」によって、快適なオフィス環境を整え、居心地の先にある生産的で創造的な会話を後押しする「会話のデザイン」が、今のオフィスに求められていることがよくわかりました。そこにWPSが加わることで、人が自然に集まり、リラックスした雰囲気の中で交わされる気軽な会話は、新しいアイデアや発想を引き出しやすくし、オフィスを「価値を生み出す拠点」へと更に高めていくのでしょう。これからの職場では、そんな日常的なコミュニケーションの積み重ねが未来をつくっていくのかもしれませんね。


「We Proudly Serve Starbucks®コーヒープログラム」とは

ネスレが提供する、オフィスでスターバックスのコーヒー体験ができると話題のコーヒープログラム。スターバックスの高品質のアラビカ種コーヒー豆を使用し、専用のフルオートマシンで抽出することで、本格的でメニュー豊富なドリンクの提供が可能。


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ネスレ日本株式会社 サプライビジネス事業本部 マシンビジネス営業部

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