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「第二の創業」を働き方から描くオフィスデザイン/内田洋行
2025.11.28 | レポート
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上/フロアごとに意匠やカラーリングを変えた「3C Zone」。執務エリア前の共用部に配置し、業務、打ち合わせ、休憩など多目的に使える
オフィス事例 ―北海道新聞社―
IT商社の内田洋行は、ICTとデータを活用し、オフィス・教育・公共空間など多様な領域で、人と場の関係を再構築している。空間構築の知見とテクノロジーを融合させ、働く場と学ぶ場の快適性と創造性を高めている。
組織の壁を越え、新たな価値を生み出す
北海道新聞社は本社移転を「第二の創業」と位置づけ、変革と挑戦を掲げた働き方改革プロジェクトを推進した。単なる物理的な移転ではなく、組織文化や働き方そのものの変革を伴うことを目指した。その実現に向け、内田洋行はオフィス構築のパートナーとして、コンサルティングから空間設計、プロジェクトマネジメントまでを包括的に支援した。
空間デザインには、新聞社ならではのテーマ性を随所に取り入れた。例えば、各階には新聞の歴史的なフォントをサインとして使い分け、視覚的にも新聞文化を感じられる工夫が施されている。作業エリアはグレースケールで統一され、協働スペースにはカラーを用いて新聞紙面を連想させる配色を採用。壁には地域の歴史にちなんだレンガの粉体塗装が施され、ファサードは新聞のレイアウトを想起させるデザインを採用し、新聞社としてのアイデンティティーを体現している。

新聞紙面のレイアウトをイメージしたファサード。ガラス窓越しに、階段を行き来する社員の動きが街中に現れ、活気あるオフィスの雰囲気が伝わる

「boulevarD」をコンセプトに、部署間を隔てる壁を無くしたフリーアドレスをベースとした執務エリア。中央に大通を模した通路を貫通させ、社員同士の接触機会を増やした
新オフィスのフロアデザインコンセプトは「boulevarD(ブールバード)」。札幌の象徴である大通公園をモチーフに、オフィス全体を“街”に見立て、中央に人や情報が行き交う「大通」を配置。その両側に多様な機能を持つスペースを展開することで、組織の縦割り構造を打破し、部門横断的なコミュニケーションとコラボレーションを促進する構成となっている。
執務エリアは、従来の個室型から一新し、壁や仕切りを極力排除したオープンオフィスを採用。ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の考え方を取り入れ、業務内容に応じて最適な場所を選べるよう、多様なワークスペースが用意された。これにより、柔軟で自律的な働き方が可能となり、新聞制作の中枢である「ニュースエディター席」もオフィス中央に配置され、情報の集約と迅速な意思決定を支えている。各階には「3C Zone」と名付けられた多目的スペースが設けられ、フロアごとに異なるテーマカラーとデザインで、来客対応や社員同士のリフレッシュ・対話の場として機能している。
さらに、内田洋行が得意とするICT技術も空間全体に導入されており、業務の効率化と快適なコミュニケーションを支える仕組みが整備されている。使いやすいAVコントロールシステムや、ウェブ会議設備、集音性に優れた天井埋め込みマイクなどが設置され、ハイブリッドな働き方にも対応した環境を実現した。
本社1階には最大200名を収容可能な交流スペース「DO-BOXEAST」を設置。地域住民や団体が利用できる場として、新聞社の社会的役割を体現する空間となっている。
北海道新聞社の新オフィスは、社員の主体性を尊重しながら、社内外の交流と情報の流れを加速させる設計が随所に施されており、内田洋行の空間デザイン力とコンサルティング力が結実した好例と言えよう。

執務エリア内に設けた、自律的な働き方を促すフリーエリア。インテリアのベースとなる濃淡のあるグレーに調和するように、各階ごとにサインのフォントとカラーを設定した

建物1階に設けた、最大200名を収容可能な交流スペース「DO-BOX EAST」。社内イベントだけでなく、地域住民も利用できる場として、マルシェやセミナーが開催され、新たな交流の場として活用される

大通に面した階段室。「3C Zone」にもアクセスしやすく、ガラス越しに明るい日差しが降り注ぐ空間のため、積極的に階段での移動を選択する社員が増え、健康増進にも役立っている
「北海道新聞社」DATA
床面積/8,500㎡
施設利用者数/760名(グループ会社除く)
工期/2023年1月~2024年10月
竣工/2024年10月

