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生活者の日常に寄り添う、高架下の木造商業施設 M'av浦安/メトロ開発
2025.09.26 | レポート
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上/商業施設「M’av浦安」の浦安駅側エントランス。東西線浦安駅高架下の商業施設開発として新築された
2025年3月、東西線浦安駅東口側の高架下に「M’av(マーヴ)浦安」が開業した。3店舗が入るこの商業施設の特徴は、一部が木造建築であること。温かな木の表情が迎え、駅の利用者や近隣に住む人たちの日常に寄り添う空間となっている。
東京メトロ東西線は、東京・中野駅から千葉・西船橋駅を結ぶ路線で、そのうち西葛西駅から西船橋駅までは高架区間。近年、沿線の高架下施設は老朽化による建て替え期を迎えており、今後10年ほどかけて順次リニューアルが計画されている。浦安駅全体計画の第1期として、駅東側の駐輪場として使われていた場所に「M’av浦安」が新築された。木造平屋の建物と鉄骨造平屋建物が、通路を挟み向かい合う。本施設は、東京メトログループが手掛ける初の木造建築である。施設開発を担ったメトロ開発の小塚稔氏は、こう話す。
「東京メトログループではサステナビリティーを経営の中心に据え、環境への取り組みに力を入れています。その観点から、今回木造を採用しました。木造は建築時に排出する二酸化炭素の量を削減できるなど、カーボンニュートラルに貢献します。また、適切なメンテナンスを行えば長期間使い続けることができ、木材の再利用も可能です」
設計を担当したのは、東急設計コンサルタントの伊藤浩史さん、段谷麻子さんらのチーム。周辺で生活する人々が多方向から訪れ交わる場所を目指し、設計のコンセプトを「たすきがけ」とした。駅側の入り口には、木製フレームが交差する屋根を柱が支えるパーゴラを設置。高架下をヒューマンスケールに近づけ、人を自然と引き込むゲートとして機能する。また鉄道廃材を再利用し、デザインに取り入れた。中通路の外床には廃レールが交差するように埋め込まれ、枕木がステップを形づくるなど、古材がさらなる温かみを添える。
木構造を生かすため、内装にはデザインコードを設けている。例えば、客席天井には仕上げ材を貼らない、ガラス面に貼り紙を増やさないなどのルールにより、店舗利用者や通路歩行者が、外と中で木が連続する様を感じることができる。各店舗の閉店後もシャッターを閉めることなく、外通路側の照明一列を24時間点灯させているのは、高架下を生活動線とする人たちへの配慮だ。
今回開業した東側3店舗に続いて、現在、浦安駅西側商業施設のリニューアルも進行中で、2026年度に完了予定。それにより「M’av浦安」はグランドオープンを迎え、沿線の暮らしをさらに充実させる施設へと成長していく。
木製ひし型ビームフレームの屋根を持つパーゴラ、テーブルやベンチを設置し、気軽に訪れることができる空間を意図している。ステップ部分には鉄道の枕木を再利用
木造建物の庇ルーバーは外と中で連続する。木構造を現すよう、内装のデザインコードを設けている
中通路を挟み、二つの建物が建つ。写真左が木造、右が鉄骨造建築で、それぞれ庇が通路に伸びる。床には東京メトログループが保管していた廃レールを、交差するように配した
メトロ開発
小塚稔さん
東急設計コンサルタント
伊藤浩史さん
東急設計コンサルタント
段谷麻子さん
メトロ開発株式会社
- TEL. 03-5847-7805
- URL. https://www.metro-dev.co.jp/