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包まれるような座り心地への感動を誘う空間/KOKUYO
2025.07.28 | レポート
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上/チェア「ingCloud」の座り心地を体験できる展示。中央には、白い二つのチェアが浮かぶようにシンボリックに配置された
今回のオルガテック会場で、ひときわ異彩を放っていたのがKOKUYOのブースだ。外側は白い幕で包まれ、中の様子は外からはうかがえない。アプローチを進んだ先に広がる空間にあるのは、新発表のチェア「ingCloud(イングクラウド)」のみという、大胆な構成だ。
この演出は、来場者にingCloud の“圧倒的な座り心地” を体験してもらうことを目的としたもの。実際に座ってみると、ふわりと包まれるような浮遊感に驚かされる。これは、バネを使わず座る人の動きに追従する機構や、身体のラインにしなやかに沿う3Dメッシュ構造によるもので、製品開発には8 年を費やしたという。このチェアの魅力は、何よりも座ることで伝わると考え、体験を重視した空間づくりがなされた。
空間デザインのテーマは「雲と衣」で、レース、透過性の異なる2種の衣、通常の壁の3種をレイヤー状に重ね、柔らかく奥行き感のある空間を構成。アプローチの途中では、チェアや人影が透けて見えたり、ingCloudに座った人のコメントが壁面に映し出されたりと、奥への期待感を高める仕掛けが施された。
ブースの内側は、大きく二つの体験ゾーンで構成された。外周部では、やや外側に傾けた壁面に、ingCloudの体圧分散の仕組みをグラフィカルに表現した映像を投影。壁沿いに並ぶチェアに座りながら映像を眺め、自然と後傾姿勢の座り心地を体感できる。中心の大きなテーブルでは、座って実際にキーボードを打つ体験ができる。ここで来場者が入力したingCloudの座り心地への感想は、壁やテーブルの上にリアルタイムで投影された。そして、最後のエリアでは体験を補完するように、機能の解説があるパンフレットの配布やワークシーンのイメージ写真などが展示された。
期待感を高め、体験を誘い、最後に説明するという順序だった構成により、製品の魅力を最大限に印象づける空間が実現されていた。
働き方や価値創造の変化も、まずは一つのプロダクトが起点となる。そんな原点に立ち返ったような潔い展示は、多くの注目を集め、長い列を生んでいた。そして、オルガテックのテーマ「SHIFT DESIGN」をコンセプチュアルに表現したデザイン性の高いブースを表彰する「ORGATEC TOKYO Awards」のグランプリに選ばれた。
ingCloudは、ライトグレーとブラックの2色。それぞれ単色とアクセントとして可動部にオレンジ色があしらわれたタイプがある
白い幕で覆われたブース。透けて見える人影が奥への期待感を高める。設計はコクヨの針村展輔、伊奈萌
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