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コーヒーで 人と人がつながる場所 オフィスの新しい コミュニケーションスタイル /ネスレ日本
2025.05.27 | レポート
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「We Proudly Serve Starbucks® コーヒープログラム」
オフィスにおけるコミュニケーションの形が進化している。特に、リモートワークとオフィスワークのハイブリッド化が進む中で、偶発的な出会いや交流が新たな価値を生み出すことが重要な要素だろう。コーヒーが人々をつなげ、共創を促進する役割を果たす場所が注目されている。ダイキン工業での実証実験を基に、新たなコミュニケーションスタイルの可能性を探っていく。
コーヒーマシンとコミュニケーション 活性化の関係性を検証する
オフィスワークとリモートワークのハイブリッド化が定着した今、オフィスは「働く場」としてだけでなく、明確な付加価値を持つことが求められている。ワーカーの心身の健康を促進する「ウェルビーイング」「心理的安全性の確保」など、いくつものテーマが挙げられるが、近年、その中で最も重要視されているのが、「Co-Creation(共創)」だろう。社内外の多様な立場の人々が協力し、新しい価値を共につくる共創を実現するためには、「短時間での集中」と「偶発的な出会い」という2種類のコミュニケーションを誘発することが必要となってくる。とりわけ後者は、共創のきっかけとなるため、そうした出会いをいかに生み出すかに注目が集まっている。
こうしたニーズを受け、今、さまざまな企業がオフィス内にコミュニケーションを誘発するための仕組みや設備を導入している。その一つに仕事の合間にコーヒーを淹れにコミュニケーションエリアを訪れると、そこで他部署の人たち社外の人たちと出会う。そして、そのままコーヒーを片手に会話が始まり、コミュニケーションが活性化されていく。こうした光景を想像するのは、難しいことではないだろう。
だが、実際にコミュニケーションエリアにおける施策や、そしてコーヒーカウンターがどれだけの効果をもたらしているのか。これを実証的に数値化し、検証した例はほとんど見かけたことがない。しかし、質の高い共創を実現するためには、確かなエビデンスに基づいたオフィスづくりが求められていくだろう。
そんな中、オフィスにおけるコーヒーマシンとコミュニケーション活性化の関係性を検証するプロジェクトが行われた。主導した企業は、ネスレ日本と丹青社だ。検証に使われたのは、丹青社が提供する「FAC+(ファクタス)」という調査サービスだ。そして、コーヒーマシンには、ネスレ日本が展開する「We Proudly Serve Starbucks®コーヒープログラム(WPS)」が採用された。ファクタスは、丹青社とピクシーダストテクノロジーズの協業によって生み出されたサービスで、ウェブカメラやセンサーを通じて空間にまつわるさまざまなデータを取得・可視化する。それにより、これまで感性や経験値によって行われてきた空間の設計に定量的なデータを掛け合わせ、事業者の課題解決やエンドユーザーの更なる体験価値向上を目指す。
WPSは、オフィスでスターバックスの高品質な1杯を楽しめるコーヒーソリューションである。
実証実験は、昨年9月24日から11月14日にかけて、ダイキン工業の東京支社オフィスにて行われた。2023年5月にオープンしたこのオフィスでは、Co-Creationエリアを新設し、多くのステークホルダーを誘引し、国内外・社内外の協創活動を推進する。そのエリア内にある、協創パートナーが利用できる交流スペース「Co-Creation Lab」に、半天球カメラ1台、音声取得デバイス(VUEVOTM)2台を設置し、人数、エリア滞留、発言量、会話種別(ビジネスorプライベート)、感情(Happy、Positive、Sad、Angry、Fear)の各データを取得。その上で、10月8日から11月11日までWPSを設置し、コーヒーマシンの設置前と設置後で、それぞれのデータがどのように変化したのかを可視化し、検証した。
実証実験で得られた結果
■ WPS設置後、会話のHAPPY度が10ポイント向上。
■ 生成AIで会話内容の仕事関連度を分析した結果、WPS設置後は5ポイント低く、業務外のコミュニケーションが増えた可能性が高い。
■ 生成AIで会話内容のPositive度合いを分析した結果、Positive度合いが7.4ポイント増加した。
■ 生成AIで会話内容のSad度合いを分析した結果、Sad度合いは0.2ポイント減少した。
■ 生成AIで会話内容のAngry度合いを分析した結果、Angry度合いは0.3ポイント減少した。
■ 生成AIで会話内容のFear度合いを分析した結果、Fear度合いは1.7ポイント減少した。
5秒以上の平均滞留人数が約3.9倍、 30秒以上の平均滞留人数が 約4.7倍アップ
その検証結果を見ていくと、5秒以上、つまり、Co-Creation Lab内を素通りにしたのではなく、立ち止まった滞留人数の平均が、設置前には114人であったのに対し、設置後は446人と約3.9倍に増加。更に30秒以上の平均滞留人数に至っては、64人から303人と約4.7倍も増えている。また、平均滞留時間ごとの人数傾向を可視化したグラフによると、設置後に1分から4分程度の滞留者が増加していることも見て取れる。他にも、1人ではなく2人以上での利用率が23%もあったことや、音声分析では平均発言数が設置前の1.2倍、平均発話人数が6.7倍増加し、発言内容もハッピー度が10ポイント増、ポジティブ度が7.4ポイント増といった検証結果が得られている。
Co-Creation Labでは、今回の検証プロジェクト以前から、火曜日と木曜日の週に2回、15時から30分間、コーヒーとアイスティーを無料で提供し、社内外のコミュニケーションを活性化させる「CoLabカフェ」という取り組みを行っていた。だが、毎回、集うのは同じメンバーばかりだったり、コーヒーを注いですぐに自分の執務室へと戻ってしまう人も多かったりと、コミュニケーションの活性化という観点では十分な成果が得られなかったという。
しかし、ファクタスが導き出した今回の検証データから考察すると、WPSを設置したことで、Co-Creation Labに集まる人数自体が増えていることが分かる。また、滞留時間も伸びていることから、例え1人で利用したとしても、そこで誰かと出会い、立ち話をしたり、ソファに座って雑談したりしているということが伺える。更には、その偶発的なコミュニケーションより、仕事のモチベーションを上げるポジティブな会話やプライベートな会話など、量だけでなく、質までもが向上していることが読み取れる。つまり、今回の検証プロジェクトにより、Co-Creation Labにおいて、WPSを中心とした偶発的な出会いやコミュニケーションが醸成されていると言える。
オフィス内にコミュニケーションエリアを設け、そこに、オフィスにいながらスターバックスのコーヒーが味わえるWPSを設置する。たったそれだけのことで、得られるメリットは大きいということが分かった。社内のプロジェクトチーム内の会話促進、偶発的なコミュニケーションによる、オフィスワーカー同士の短くカジュアルな雑談、それらはワーカーの心理的安全性やエンゲージメント、そして共創意識を高めていくだろう。更に、コーヒーを抽出するわずかな時間を利用し、アンケート調査やモニタリングの場に、あるいは、社内情報を共有する場にすることもできそうだ。コーヒーが促進する活発なオフィス内コミュニケーションは、多様な可能性を秘めている。
「We Proudly Serve Starbucks® コーヒープログラム」とは
ネスレが提供する、オフィスでスターバックスのコーヒー体験ができると話題のコーヒープログラム。スターバックスの高品質のアラビカ種コーヒー豆を使用し、専用のフルオートマシンで抽出することで、本格的でメニュー豊富なドリンクの提供が可能。
PROJECT MEMBERS’ COMMENTS
ダイキン工業 総務部総務グループ
松山菜摘さん
東京支社には約670人の社員が在籍していますが、営業職も多く、常時、オフィスには270人程度がいるイメージです。コーヒーマシンが入ってから、単なる通路ではなく、Co-Creation Labに目的を持って訪れる人が増えました。同期社員にばったり会ったり、社内活動であるオフィス委員会の人と遭遇して、普段はしない会話ができたりと、仕事の打ち合わせ以外に想定していなかった形で交流が生まれることもあります。週の後半には、ほとんどの席が埋まっている状態です。誰もが居やすい空間となり、WPSが、本来、Co-Creation Labが持っていた「協創」の意味を後押ししてくれたような感じがします。
丹青社 空間メディアマーケティング部
近藤完さん
本実証実験は、WPSが単なるコーヒータイムに留まらず、「ワークスペースにおけるリラックス空間とは何か?」という大きなテーマを追求する目的でお声がけいただき実現しました。当社のサービスである「FAC+」を活用し、オフィス空間で初めてコミュニケーションにまつわるデータを取得・定量評価を実施しました。本実証実験をきっかけに想像とは異なるデータも取得することができ、今までにない視座や「働く場所におけるコミュニケーション」の活性化施策などワークスペースの新たな可能性を感じる結果が得られたと感じています。今後もデータ収集・活用を行うことで、感覚だけに頼らない空間価値向上に努めていきます。
ネスレ日本 飲料事業本部
鈴木優介さん
コーヒーの周りでは自然と会話が弾み、コミュニケーションが活発化します。我々は本プログラムを通じて、数多くの心かよわせる瞬間や「つながり」を日本中に一つでも多くつくることを目指しています。そのためには居心地の良い空間設計や話しやすい職場の雰囲気などのあらゆる要素によって魅力あるオフィスが形づくられると思っています。本実験では「つながる場」としてのWPSがどのような役割を果たすのかといったことを理解するためのチャレンジでした。ポジティブな結果を受け我々もサービスの拡充に一層力を入れ、働く人々に活力と潤いを届けていきたいと思います。
「FAC+(ファクタス)」とは……
「FAC+」は、迅速なデータレポーティングと丹青社のノウハウを活かした改善提案が特徴の空間データ取得サービス。自動でデータをグラフ化・数値化し、施設改装や新設時に活用できる。また、性別・年代や人流データを分析し、マーケティングや売上最大化に貢献する。活用例としては、改装計画時の現状把握や、新装・改装後の効果検証、施設内A/Bテスト、イベントの定量/定性評価があり、顧客体験価値の向上に役立つ。
お問い合わせ先
ネスレ日本株式会社サプライビジネス事業本部 マシンビジネス営業部
MAIL:starbucks.wps@jp.nestle.com