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第1回「Visional City Design Competition」応募受付開始/TRIAD

2025.04.28 | レポート

都市の中で生まれる“ 影”に光を当て
土地や建築の価値を高める
新しいアプローチを模索する建築デザインコンペ


2025年4月から、新たな建築デザインコンペ「Visional City Design Competition」の作品応募受付が開始された。同コンペは、不動産売買事業等を展開するTRIADが主催し、都市において見過ごされがちな問題、言わば「影」の部分に焦点を当て、建築的な視点でその解決を目指す作品を募集している。建築計画だけでなく、ビジネスモデルやアート、コミュニティデザインなど多様な視点から革新的な都市の未来を創造するアイデアを募る。

審査員を務めるのは、藤本壮介氏(藤本壮介建築設計事務所)、谷尻誠氏(SUPPOSE DESIGN OFFICE株式会社 代表取締役)、中村寛氏(多摩美術大学リベラルアーツセンター大学院教授/アトリエ・アンソロポロジー合同会社 代表)、林亜季氏(ブランドジャーナリズム 代表取締役CEO)、齋藤精一氏(パノラマティクス 主宰)、武藤弥氏(LAETOLI株式会社 代表取締役CEO)、富田奈利次氏(株式会社TRIAD 執行役員)。建築デザインコンペではあるものの、その表現の方向性、問題提起の幅の広がりを踏まえ、建築家だけでなく、不動産事業や都市開発、社会問題などさまざまな分野から審査員が招かれた。

コンペの開催に先駆けて、3月14日には、審査員らによるトークイベントが行われ、コンペの目的や、どのような作品を求めているかが示された。トークイベントの前半では、LAETOLI代表取締役の武藤弥氏、TRIADと共にコンペのプロデュースを務めた齋藤精一氏が登壇し、第1回のテーマ「ディストピアの出口」に込めた思いを語った。
「主に不動産開発を手掛けるTRIADと、ITを活用して投資家から資金を集めてつないでいくLAETOLIは、『投資を通じて、取り残された不動産をなくす』ことを一つの目標としています。日々、建築や都市開発に携わるなかで、建物の老朽化や、土地の権利関係、その他にも多くの問題に直面する機会があります。そして、その問題を解決するためには、私たちの会社だけでなく、もっと広く、建築だけではない視点からもアプローチができないかと考え、齋藤さんと一緒にこのコンペのアイデアを練っていきました」(武藤氏)
武藤氏や齋藤氏が建築を学び、社会に出た2000年代初頭は、経済不況も相まって、単純に建築を設計するだけでなく、建築が必要とされる理由や背景から考え、社会問題に向き合っていくことが求められ始めた時期であったと振り返る。
「これまでの建築コンペの多くが、敷地を始めとする具体的な条件が提示され、そこに対して設計をしていくのに対し、本コンペは応募者が自ら課題を見出し、その解決策を示していくものになることを目指しています。時に、それは大きな都市開発の視点だけでなく、もっと小さなこと、マイクロディベロップメントとも言えるような視点が大切になるかもしれない。まずは理想よりも現実を見て、文化施設など理想論ではなく、本当に必要な機能と経済性を持った建築やアイデアを考えるコンペであってほしい」(齋藤氏)
同コンペでは、東京都心の6区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、目黒区)において、応募者が考える都市の課題とそれと結びつく実在する土地を選び、建築計画や社会の仕組みづくり、ビジネスモデル、法律に関するアイデアなどを提案する。

「最近、さまざまな場面でディストピアという言葉を耳にします。都市は、そこに住む人々の利害関係が交錯する場所であり、それぞれが異なる理想や価値観を持っている以上、一つの『正しいユートピア』を定義することは難しい。人口減少が避けられない現実として待ち受けている日本において、今回挙げた六つの区は、今後も発展が期待される日本の特異点である一方、再開発が進む中で、都市の影の部分が浮き彫りになっていく可能性もはらんでいる。その都市の問題に光を当て、場所や土地の価値を高めるための方法として、『ディストピアの出口』をテーマに設定しました」(齋藤氏)トークイベントの後半では、審査員全員が登壇し、それぞれが捉える「ディストピアの出口」というテーマに対する思い、携わる分野の視点から、このコンペを通して見てみたい新しい都市の在り方が語られた。
コンペのエントリーは、2025年7月31日までウェブサイトから受け付け中。その後、作品提出や審査を経て、12月下旬に結果を発表予定だ。

藤本壮介氏 
藤本壮介建築設計事務所 主宰


VCDC-316

「ディストピアの出口」というテーマは、とても難しく、面白そうなお題だと思う。コンペは選ばれることも大事だが、同時にコンペをダシにして自分と向き合い、発信する機会でもある。若い頃からコンペで負けまくってきたけど、そこで毎回考えたことは自分の中で大切な財産となっている。また、普段の仕事の中でも「もっとこうしたら面白くなるかも」とさまざまに思考を巡らせている。複雑に考えすぎず、それぞれの「自分だったらこんな街に行きたい」と思えるアイデアを思い切り表現してほしい。

谷尻誠氏
SUPPOSE DESIGN OFFICE株式会社 代表取締役


VCDC-350

私たち建築家は“新しいこと”を求められるけれど、実際に新しいアイデアを提案すると「それって事例ありますか?」と尋ねられることも少なくない。新しいことにチャレンジする時、できない理由よりも、できる理由を考えたいし、それに共感してくれる相手との関係性をつくっていきたいと思っている。日頃から建築や都市の問題や解決方法を考え続けることで、その思考が筋トレのように、これからのクリエイターたちの力になっていく、このコンペがその起点の一つになってほしい。

中村寛氏 
多摩美術大学リベラルアーツセンター 大学院教授 
アトリエ・アンソロポロジー合同会社 代表


VCDC-389

長く都市人類学に携わる中で、ジェントリフィケーション(都市の富裕化現象)とそこで弾かれてしまう人々を見てきた。また、都市をフィールドワークしていて面白いと感じることに、その都市に残り続けるコモンズが見える瞬間というものがある。ある人類学者の言葉を借りれば、それは「場所の持つ感情」のようなものだ。都市の問題に目を向ける時、一般論や三人称だけでなく、例えば「かけがえのない他者」である“二人称”の視点で都市の文脈を読み解くことで、新しいものが見えてくるかもしれない。

林亜季氏
ブランドジャーナリズム 代表取締役CEO


VCDC-416

今、さまざまなメディアにおいて、多くの人が社会問題に対して意見を言いっ放しになっていると感じる。むしろ何か具体的に行動すると叩かれてしまうかもしれないと怖れ、何もしないことが安全という風潮もある。同じく、建築も全方位に向けて無難につくられて、結局何のために建てたのか分からなった事例も少なくない。このコンペでは、周りの意見よりも、とても個人的な視点で都市を考えてもいいと思う。建築業界とは異なる分野の人でも、「自分の思い × 建築」という視点で新しいアプローチを見せてほしい。

齋藤精一氏
パノラマティクス 主宰


VCDC-89

このコンペでは、土地や建築を開発することだけでなく、その土地が既に持っている価値を守るために、特区などの法律をつくって“変えない”という考え方も出てくるかもしれない。また、例えば「音楽の持つ力を最大限活かすことができる環境づくり」といった、課題設定から自分で決めていくこともできる。それは必ずしも、直接的
に収益性と結びついてなくても良い。新しい建築やビジネスモデル、ルールが、時と共にその都市に価値を生み出していく、その理由や問題意識に現実的な視点を持って取り組んでほしい。

武藤弥氏
LAETOLI株式会社 代表取締役CEO


VCDC-58

金融が不動産を支配しているような世の中において、建築や都市開発に多様性をもたらしたいという思いで今の事業に取り組んでいる。そのためには、社会の情勢によって変動するものではない、その建築そのものや街の持つ価値をつくることが重要になる。自分たちの会社だけでできることは限られているけれど、もっと多くの人や会社と協力すれば、それを実現できると思っている。今回のコンペを通して、私たちが投資したい、一緒にプロジェクトに参加したいと思えるようなアイデアに出会いたい。

富田奈利次氏 
株式会社TRIAD 執行役員


VCDC-254

都市に存在する多くの“影”を解決するためには、建築家だけでなく、いろいろな分野の人の力が必要だと感じる。今回、このコンペに参加する人は、私たちにとってステークホルダーであり、一緒になって革新的な都市の未来を創造していく存在だと考えている。作品は、建築を建てることだけでなく、アートでも、どのような形でも構わない。不動産業界やソーシャルデザイン等に従事する人にも参加してもらいたいし、不動産と別の表現が出会って、新しい可能性が生まれることに期待している。


第1回 創造都市デザインコンペティション
「Visional City Design Competition」


テーマ/「Exit of DYSTOPIA」
東京都心6区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、目黒区)の実在する敷地に限定して、その土地や建物がもつ課題に対して何らかの方法で光を当て価値を高めるための提案を募集

エントリー受付/2025年4月1日~7月31日
作品受付/2025年8月1日~31日
賞金/最優秀賞300万円×1点
   優秀賞100万円×2点 特別賞50万円×3点
エントリーフォーム/https://triad.tayori.com/f/vcdc-entry


オフィシャルサイト/https://www.vcdc.jp/

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