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【PR】異なる環境を体験するための分散型トイレ/LIXIL

2022.03.28 | INTERVIEW

左から森泰行建築設計事務所の畝森泰行氏、tecoの金野千恵氏


TOILET SPACE INTERVIEW

畝森泰行建築設計事務所とtecoは、公共施設や住宅の設計を通し、過ごし方を強制するのではなく居心地が微細に変化する大らかな環境の下、利用者が自ら居場所を選択するような場所を提案してきた。そんな二組が事務所を構える「BASE」では、6フロアの中にさまざまな環境をつくることで、街への多様な開かれ方と、開くことが設計に変化を与えることを意図している。個人と街、フロアとフロアが連続し、プライベートとパブリックがゆるやかにつながる中で、トイレはどのような役割を持つことができるのだろうか。両事務所を主宰する畝森泰行さんと金野千恵さんに聞いた。


二組の設計事務所が共有する拠点「BASE」

問屋街の風情が残る下町、東京・浅草橋の一角に立つ6階建てのビル。全面開放が可能な、大きなガラス戸を備えた1階と、窓ガラスのない2階開口部から茂った植物が見える、開放感にあふれた場所だ。畝森泰行建築設計事務所とtecoがオフィスを兼ねたシェアスペースとして共有する拠点「BASE」は、築50年を越える建物を改修してつくられた。


東京・浅草橋に立つ「BASE」。近隣には工房が多く、職人の作業風景が街に染み出している様子を参照し、街と緩やかにつながる場所を志向した
東京・浅草橋に立つ「BASE」。近隣には工房が多く、職人の作業風景が街に染み出している様子を参照し、街と緩やかにつながる場所を志向した


1、2階は打ち合わせや模型作業などに活用する他、ポップアップカフェやギャラリーなどに対応するシェアスペースとしても運用している。1階は、キッチンを備え、フルオープンにできる開口部によって通りとつながる「スクエア」。2階は、既存の窓ガラスを全て外し、グリーンを配して外の環境が入り込んだような半屋外空間の「ガーデン」とした。3階はteco、4階は畝森泰行建築設計事務所の執務スペース、5階は資料や本を収める「ライブラリー」、塔屋階の6階で構成される。フロアごとに異なる環境を行き来することで、発見や刺激を生むことを意図している。


1階ファサードは、ガラス戸を全面開放できる。床は歩道のインターロッキングを屋内に引き込むようタイルを貼った(2点撮影/高野ユリカ)
1階ファサードは、ガラス戸を全面開放できる。床は歩道のインターロッキングを屋内に引き込むようタイルを貼った(2点撮影/高野ユリカ)


二組の設計事務所が拠点を共有するきっかけは、コロナ禍が深刻化し始めた2020年1月、畝森泰行さんがオフィスの移転に際し、tecoを主宰する金野千恵さんにオフィスのシェアを提案したことだった。路面のビル一棟を共有し、街に対して拠点を開くことに可能性を感じ、プロジェクトはスタート。9月には完成し、事務所を移転した。設計にあたっては、二つの設計事務所でビルを共有する意味を考えたと畝森さんは言う。
「リモートワークが進み、オフィス不要論もささやかれる中で、あえて二組の事務所が一緒に働くので、執務スペース以外の共用部を充実させたいと考えました。CADで図面を描くだけでなく、本を読んだり、みんなでお弁当を食べたり、休憩したりということが大切ではないかと。“働く”ということの枠組みは広いはずです。そう考えていくと、執務スペースは最小限で、共用スペースの方が広いというフロア構成になりました」(畝森さん)
また金野さんは、移転にあたって集まることの意味を再考したと振り返る。
「わざわざ集まって働く価値について議論を重ねました。デスクワークだけではない価値を見出さないと、オフィスを構える意味がない。ディスカッションや考えを共有する時間が大切だと考え、個性あるフロアをいかにつくるかを考えました」(金野さん)

フロアの環境に対応する三つのトイレ

BASEの設計において、両事務所のスタッフによるアイデアコンペを実施。畝森さんと金野さんが審査をし、提案されたアイデアを細かく検討しながら、デザインを組み立てていった。共用部である1、2階と6階屋上の塔屋の3カ所に水まわりを設けたのも、スタッフが発案したアイデアだ。執務スペース以外のフロアに移動する仕掛けとして、トイレを利用している。「BASEに限らずどの設計にも共通するのですが、トイレを『用を足す』という単独の機能では考えていません。大事なのは、どんな動線の、どの部分に位置付けられるかということ。単語を並べ文脈を持たせながら文章をつくるように、前後の行動との流れを重視しています。そのためBASEでは、それぞれ性格の異なるフロアの環境に応じてトイレを性格付け、デザインしました」(畝森さん)


6階階段室からトイレ方向を見る。屋上に隣接していることから、半透明のテント生地を張り、外が入り込んだような空間を意図した。手洗いなどを納めた左手のボードはトイレ内部へ続く
6階階段室からトイレ方向を見る。屋上に隣接していることから、半透明のテント生地を張り、外が入り込んだような空間を意図した。手洗いなどを納めた左手のボードはトイレ内部へ続く


使用時は、トイレを囲むように配したカーテンを閉める。左手の開口部は、ドアと同様、内側から開閉可能なテント生地。壁と天井はスケルトン現し
使用時は、トイレを囲むように配したカーテンを閉める。左手の開口部は、ドアと同様、内側から開閉可能なテント生地。壁と天井はスケルトン現し


例えば6階トイレは、屋上の開放感をトイレからも感じられるよう、屋外の延長のような空間が設えられた。半透明のテント生地を外壁とし、その内側に配したカーテンを引いて使用する。半屋外空間を経由する2階トイレは、日本家屋の中庭に配された厠のようなイメージ。グリーンのカーテンが室内を緑色に染めている。キッチンや打ち合わせテーブルなど、さまざまな要素が混じる1階トイレは、わずか1.1㎡のコンパクトなスペースで、住宅にも応用できるようなつくりとした。3カ所全てで、LIXILのパブリック向けクイックタンク式床置便器を採用している。省スペースに適し、壁排水を取れることによる自由度の高さが決め手となった。「開放感や外部空間との関係、サイズ感を実験している」と金野さん。実際、日々利用する2階や6階のトイレでは、一人になって考えごとをしたり、トイレのついでに屋上に出てリフレッシュしたり、環境の変化が気分の切り替えにつながっている実感があるという。

トイレのきれいさに施設の姿勢が表れる

BASEの開設から1年半が経つ。自分たちで設計した働く場所は、日々のメンテナンスを通じてどう育てていくかの実践の場でもある。中でもトイレは、施設のポリシーが表れるところだと金野さんは言う。


2階への階段脇に設けたトイレ。個室内の壁には、建材のサンプルを貼った
2階への階段脇に設けたトイレ。個室内の壁には、建材のサンプルを貼った

左手のボックス内部がトイレで、右手がキッチン。設計においては、一つのルールで統一し過ぎないことで、色々な使い方を引き出すことを意図した(撮影/高野ユリカ)
左手のボックス内部がトイレで、右手がキッチン。設計においては、一つのルールで統一し過ぎないことで、色々な使い方を引き出すことを意図した(撮影/高野ユリカ)


「BASEでは、週3回朝15分スタッフみんなで掃除をしていて、トイレ掃除も当番制です。トイレは汚れやすい場所なので、管理状態が顕在化しやすい。きれいに保っているところは、そのための仕組みや意識があるんです。メンテナンスしやすい広さや掃除しやすい素材、道具の収納といった設計も重要だと感じます。自分たちの環境をいかに整え、自治していくかは、建物を育むことにつながります。『線を描くことだけが建築ではない』とスタッフに伝えてきましたが、BASEで働くことで、つくることと使うことが地続きになってきた感覚はあります。実感を伴うことにより、想像力も豊かになっていると思います」(金野さん)
竣工して手を離れるのではなく、使い続けることが設計を変えるという考えは、畝森さんにも共通している。
「古い建物なので、いろいろ不具合も出てきます。そこで、スタッフの中から営繕係を決めて、メンテナンスに当たっています。管理に手をかけることは、建物への愛着につながると考えていて、建築は、パソコンのデスクトップ上だけではなく、模型をつくって確かめ、対面のコミュニケーションを重ね、光や風といった環境を感じながら設計することが大切です。当たり前のことなのですが、そうしたリアルな体験が設計を支える基礎になる。BASEにはそうした意味も込めています」(畝森さん)


窓を外し、半屋外空間とした2階「GARDEN」。人に向けて開いた1階に対し、環境としての外に開いている。窓際の床は防水加工を施した(撮影/高野ユリカ)
窓を外し、半屋外空間とした2階「GARDEN」。人に向けて開いた1階に対し、環境としての外に開いている。窓際の床は防水加工を施した(撮影/高野ユリカ)

ステンレスシートの壁面内にトイレや収納を納めた。庭先の離れのように、外を通ってトイレに向かうことで気分転換につながることを意図している
ステンレスシートの壁面内にトイレや収納を納めた。庭先の離れのように、外を通ってトイレに向かうことで気分転換につながることを意図している

機能性では測れないトイレの役割とは

畝森さん、金野さんの二人は、学校や福祉施設など、公共空間の設計も多く手掛けている。多くの人が利用する公共施設のトイレでは、どのようなプランニングを行なっているのだろうか。金野さんは福祉施設の設計において、「トイレの配置がポイントになった」と語る。
「福祉施設ではトイレの位置が議論になります。どこに置くかで、そこまでは外部の人が入っても良いというサインにもなり得る。埼玉県の福祉施設『地域ケアよしかわ』では、通り掛かりの人がトイレを貸りるということも想定し、本来は奥に置きたいところを、区画の中央付近に配置しました。そうすると、トイレより奥に配置した事務所へは入りにくくなる。セキュリティーラインを切りたい場合に、敷居として機能します。誰もが必要な機能の空間をどこに置くかというのは、スペースのゾーニングを決定付ける要素にもなるのです」(金野さん)


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上下. tecoが設計した、団地の一画に位置する福祉施設「地域ケアよしかわ」。地域の人が集まれる場所とするため、ファサードを挟むようにベンチを設けたりと、明確な境界をつくらないように設計を進めた。その上で、トイレを区画の中心付近にレイアウトし、立ち入りやすさの境界として機能するよう意図した(2点画像提供/teco)
上下. tecoが設計した、団地の一画に位置する福祉施設「地域ケアよしかわ」。地域の人が集まれる場所とするため、ファサードを挟むようにベンチを設けたりと、明確な境界をつくらないように設計を進めた。その上で、トイレを区画の中心付近にレイアウトし、立ち入りやすさの境界として機能するよう意図した(2点画像提供/teco)


また、規模の大きな公共施設では、トイレを複数箇所に設ける場合が多い。最近では、全てを同じ設えにせず、機能や役割に多様性を持たせることで変化を付けることも多くなっていると畝森さん。
「現在設計中の学校の場合は、男女別の一般的なトイレもあれば、全て個室化したトイレもあります。複数の選択肢がある中で、自分に適したものを選ぶという傾向が増えています」(畝森さん)
男性と女性、子供と高齢者など、属性によって分けてしまうのではなく、使い勝手や居心地につながる環境を整え、その上で気持ち良く使えるトイレを選んでもらうという考えだ。金野さんが設計し、最近竣工した高齢・障害福祉施設でも、ジェンダーレストイレの議論があったそうだ。
「『きれいに保つことができれば、ジェンダーレスでも問題ないのでは』という結論から、全てジェンダーレストイレにして、サインも性別を表記していた一般的なマークから、トイレットペーパーのマークにしました。介助の人が一緒に入れるトイレ、半身麻痺の人用など、身体の違いによる使い勝手で見つけてもらえるように、広さやドアの開き方などにもバリエーションを持たせました」(金野さん)
多様な選択肢の中から自分に適したものを選べるというのは、これからのトイレのあり方の一つだろう。それぞれの人にとってのベストをどれだけ具体的に想像できるか。BASEのトイレを含めた設計には、そのための工夫があちこちに巡らされている。

PROFILE

畝森泰行建築設計事務所
うねもり・ひろゆき1979年岡山県生まれ。横浜国立大学大学院修士課程修了後、西沢大良建築設計事務所を経て2009年畝森泰行建築設計事務所設立。住宅や大型公共施設などの設計を手掛ける。

teco
こんの・ちえ1981年神奈川県生まれ。東京工業大学大学院博士課程修了後、KONNO設立を経て2015年teco設立。公共施設や福祉施設、店舗や家具など幅広く設計を手掛ける。

PRODUCT

リフォームに最適なコンパクトなクイックタンク式
パブリック向けクイックタンク式床置便器

フラッシュバルブ式トイレの交換にも適した、便器の 交換だけで空間の印象を変えることができるクイックタンク式トイレ。シャワートイレの給水ホースや止水栓などをタンクの背面に隠して、空間をすっきりと見せ ることができ、掃除しにくい箇所が隠れることで清掃を軽減できる。また、奥行き675 ㎜と、従来のタンク式便器よりコンパクトな奥行きを実現。多くのフラッシュバルブ式便器と前出寸法が同等以下なので、既存のブースサイズそのままでトイレを交換することができる。 便器のカラーは2色。タンクは5色から選べ、便器とタンクのツートンカラーのコーディネートも楽しめる。

画像提供/LIXIL
画像提供/LIXIL


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問い合わせ
株式会社LIXILお客さま相談センター
0120-179-400
受付時間:月~金9:00~18:00 土日祝9:00~17:00
定休日:GW、年末年始、夏期休暇
www.lixil.co.jp

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