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cafe co. 森井良幸氏に聞く おもてなしを表現する“音”

2016.05.20 | INTERVIEW

事務所でデザインに集中する際には、常にBGMを流しているという森井良幸氏。音楽を愛し、自ら設計する空間にも音へのこだわりを体現している氏に、店舗の音響計画で大切にしていることを聞いた。

森井ー僕にとって、目には見えない“音”をデザインする音響設計とは、おもてなしの気持ちを表現することにほかなりません。インテリアデザインは、視覚的な部分がフューチャーされがちですが、僕が目指すのは、実際に訪れる人の五感に響くような店。飲食店ならば、味覚や嗅覚を刺激するのと同様に、聴覚に対してもアプローチすることで、心地良さを感じて欲しい。音楽は気分を高揚させてくれたり、逆にリラックスさせたり、心理面に作用する重要なファクターです。


店舗で使うスピーカーに対して僕が求める機能は二つあります。

まず、一つ目は会話を邪魔しないこと。たとえ良い音のスピーカーでも、高い音や低い音が強く出るようなクセがあると会話に集中できません。JBLのスピーカーについては、JAZZなどを聴くオーディオ愛好家のための特別なものというイメージを持っていて、逆にクラブミュージックなどには向いていないという先入観がありました。

しかし、あるダンススタジオの設計を手掛けた際に、クライアントがJBLを採用し、そこで音を聞いてみると、非常に聞きやすい自然な音で『ダンスミュージックも含め、オールジャンルで使えるんだ』と、いい意味で裏切られました。大音量で音楽を流しても音質が変わらず、隣同士の人との会話を邪魔しないので、若い人が集まる飲食店のスピーカーにも良いでしょうね。


そして二つ目は、近くても遠くても音が同じように聞こえることです。音にムラがあると、同じ店内でも場所によって居心地の良さが違ってしまいますからね。以前、僕が手掛けた大阪のあるブティックでは、JBLのスピーカーを天井に配置して、聞く場所によって音に変化が出ない均一な音環境を実現しました。


最近は、狙ったところにピンポイントで音が届く指向性の鋭いスピーカーにも興味があります。この前訪れた海外のレストランでは、客席と客席の間にスピーカーを細かく配置して意識的に音の壁をつくり、隣の会話が聞こえにくくなる配慮をしたエリアがありました。JBLのスピーカーのように精確に指向性を制御できれば、そうしたマスキング効果にも期待できますし、歯科などのクリニックでは、施術台に向けて音を確実に届けることができれば、治療中の患者がリラックスできる音響空間をつくれるかもしれませんね。

音楽が身近になっている今だからこそ、音響設計によってどんな“心地よいサービス”を提供できるのかを考える必要があります。進化するスピーカーの機能をフル活用した、“音”の可能性を拡げるデザインに挑戦していきたいですね。

森井良幸
cafe co. 代表。カフェ経営に携わるとともに、ブティックやダイニング、カフェなどのインテリアデザイン、住宅やオフィスビル、ホテル、複合商業施設などのデザイン及びブランディングを幅広く手がける。時代に合わせた考え方と、使い手の考え方、人や店が何を求めているかを分解し、再構成する中で、デザイナーとしての個性をプラスしてデザインを行う。シンプルな思考をベースに、アーティストや職人の個性も取り入れながら、“ここでしかできないもの”を創造する。

ヒビノ

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