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インテリアデザイン・建材のトレンドを伝えるメディア Presented by 商店建築

技術革新と市場原理が推進するデザイン・トレンド

2019.12.16 | REPORT

10月27日~30日に香港コンベンション&エキシビション・センター(HKCEC)で「香港インターナショナル・ライティング・フェア(秋)」が、10月29日~11月1日にアジア・ワールド・エキスポ(AWE)で「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」が開催された。大規模デモの多い週末をまたぐスケジュールであり、実際に尖沙咀で発生したが、その影響は懸念していたほど感じられなかった。HKCECには35の国および地域から2700社以上が、AWEには4の国および地域から420社が出展。昨年とほぼ同様の規模であり、直前に参加を見送った企業の空きブースも見られたが、目立つほどではないように感じた。また、130以上の国および地域から4万9000人に近いバイヤーが訪れ、昨年と比較すれば減少は否めない数字となったが、欧米からのバイヤーは例年通りに多く、日本語での会話も聞かれ、香港経済の底力を感じさせるイベントとなった。

世界中のバイヤーとつながる
照明器具トレードショー

二つの展示会は共にトレードショーとしての性格が強く、各ブース内は商談でにぎわっていた。また、各国の安全規格のマークを掲げるブースも多く、中にはPSEマークを掲げて日本語対応をうたう企業も見られた。

残念ながら日本からの出展は少なかったものの、今年はパナソニックグループの松下电气机器(北京)が「香港インターナショナル・ライティング・フェア」に出展。照明事業部海外市場部部長の生野高久さんは、「出展には、二つの目的がありました」と語る。

「現在、それぞれの国々や地域で的確な開発・製造・販売を手掛けるべく、海外事業を展開しています。照明器具についても、日本の商品をそのまま輸出するのではなく、現地の規格やニーズにあった商品を企画してファブレスで生産しようと考えており、中国からグローバルで輸出を考える部署として出展しました。世界的に見れば、照明メーカーとしての認知度はまだこれからであり、世界中からバイヤーが集まるこの展示会にすることを考えました。

また、ただ知ってもらうだけでなく、バイヤーと直接的なやりとりをするという新規顧客の獲得を目指しています。実際に取り引きにつながった案件もあり、目的は達成できたのではと考えています。今後も、日本のデザインチームの支援も受けながら、無線システムなど日本の規格では実現が難しいような技術にも取り組み、ソリューションの提案や販売を展開したいと考えています」


左/松下电气机器(北京)の照明事業部海外市場部部長、生野高久さん 右/「香港インターナショナル・ライティング・フェア(秋)」の松下电气机器(北京)のブース。メディアを含め、多くの人々でにぎわっていた
左/松下电气机器(北京)の照明事業部海外市場部部長、生野高久さん 右/「香港インターナショナル・ライティング・フェア(秋)」の松下电气机器(北京)のブース。メディアを含め、多くの人々でにぎわっていた

他社との違いを見せる
オリジナルデザイン

前述の通り、最大の目的はトレードであって、これまでは自社の技術力を誇示するために有名デザイナーの作品に近いものを展示するブースが多かった。それでも、少しずつデザインに重きを置いたプロダクトが増えつつある。その背景には、技術革新の結果として新たなデザインが求められるパターンと、2700社以上がひしめく会場において少しでも埋もれてしまわないようにするためにデザインを取り入れるパターンがあるように思う。

裸電球を例に挙げると、今年はフィラメントで文字や記号を描くだけでなく、カラーガラスやハーフミラー、すりガラス調を取り入れる企業が多かった。また、電球色ではなく白色を採用したり、フィラメントの代わりにグラフィックを点描したアクリルを採用しているプロダクトも見られた。

他社に見られないオリジナルな例を挙げるならば、昨年紹介したTangla lighting社はマグネットを利用してさまざまなシェードを付けられる電球を展示。LIQUILEDS社はガラス部分の下部をカットしたような形状で、フィラメントをカット部分に回した「Jellyfish」を展示していた。

台湾・台北に拠点を持つLIQUILEDS社のMichael Yu氏は、「過去に手掛けたプロダクトがそうであったように、来年には『Jellyfish』もさまざまなブームで見かけることになるでしょう。でもその頃には、我々は誰も見たことがない新たなプロダクトを展開しているはずです」と自信を見せる。


左上/白色のフィラメントとハーフミラーを組み合わせた電球 左中/フィラメントの代わりにグラフィックを点描したアクリルを採用した電球 左下/マグネットでさまざまなシェードを付けられるTangla lighting社の電球 右/ガラス部分の下部をカットしたような形状で、フィラメントを小口に回したLIQUILEDS社の「Jellyfish」
左上/白色のフィラメントとハーフミラーを組み合わせた電球 左中/フィラメントの代わりにグラフィックを点描したアクリルを採用した電球 左下/マグネットでさまざまなシェードを付けられるTangla lighting社の電球 右/ガラス部分の下部をカットしたような形状で、フィラメントを小口に回したLIQUILEDS社の「Jellyfish」

デザインを通して
世界を見据える

デザインという観点から展示会を見ると、世界各国のアワードの受賞を掲示するブースが増えつつあるように感じた。ドイツの「iF Design Award」や「red dot design award」、アメリカの「International Design Excellence Awards」の受賞を掲げるROMNEY社は、中国・広州でベースライトからオリジナルオブジェまで多角的に開発・製造を手掛ける照明企業。

同社のWater Peng氏は、「さまざまにパーツの組み合わせを変えることで空間に合わせて壁面や天井を彩るプロダクト『HANS』は、今回で3世代目になります。他社との違いを表現するために企画・開発したプロダクトであり、ヨーロッパでのライセンスも取得しました。来年3月に開催されるLight+Buildingにも出展を予定しています」と語る。

1998年に香港で起業し、中国・蘇州に拠点を構えるSavia Electronics社は、自社デザイナーのSING CHAN氏が手掛けたTILES LIGHTINGシリーズを展開。半円筒状のタイルの内側に照明を仕込み、他のタイルを間接照明で見せるペンダントやスタンドライトを展開していた。プロダクトに呼応するように半円筒のパーティションで構成したブースのデザインも、SING CHAN氏によるものだという。

「香港インターナショナル・ライティング・フェア」では、主催者である香港貿易発展局が、世界的なライティング・デザイナーであるTino Kwan氏のセミナーを開催。「スモールハウスにおける照明計画のあり方」について、バイヤー以外にも多くの聴衆が耳を傾けていた。


左上/Savia Electronics社のTILES LIGHTING。半円筒状のタイルの内側に照明を仕込み、他のタイルを間接照明で見せる 左下/TILES LIGHTINGの特徴を踏まえ、半円筒のパーティションで構成したSavia Electronics社のブース 右/パーツの組み合わせを変えることで、空間に合わせたプロダクトを可能にするROMNEY社の「HANS」
左上/Savia Electronics社のTILES LIGHTING。半円筒状のタイルの内側に照明を仕込み、他のタイルを間接照明で見せる 左下/TILES LIGHTINGの特徴を踏まえ、半円筒のパーティションで構成したSavia Electronics社のブース 右/パーツの組み合わせを変えることで、空間に合わせたプロダクトを可能にするROMNEY社の「HANS」

スマートシティーに求められる
複合的なライティング

今年で4回目を迎える「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」では、回を重ねるごとに、スマートスマートシティーおよびライティングが具現化されつつあることを実感させる。多くの企業が、監視カメラや広告、wifi、スピーカー、インターフォンを組み合わせた街灯を展示。

中国・江蘇のHELIST OPTOELECTRONIC社のSabrina Zhu氏は、「ただハードを展開するだけでなく、ソフトを提供し運営まで手掛けることで、ケースごとのニーズにより深く対応していきます」と語る。また、深圳のUnilumin社のAaron Huang氏は、「ガーデンライトから街路・高速道路の照明、工業用照明器までを手掛けており、実験室や開発セクションを通して、クオリティーコントロールに自信を持っています。スマートシティー化に応える街灯には、オリジナルデザインが求められるでしょう」と説明する。

同イベントの隣では、「エコ・エキスポ・アジア」を開催。香港では、行政が主体となった省エネ施策が推し進められており、両イベントを複合的に眺めることで都市に求められる光のあり方が見えてくるだろう。


左/監視カメラや広告、wifi、スピーカー、インターフォンを組み合わせた、HELIST OPTOELECTRONIC社の街灯 右/スマートスマートシティーにおける街灯のオリジナルデザインを提案するUnilumin社
左/監視カメラや広告、wifi、スピーカー、インターフォンを組み合わせた、HELIST OPTOELECTRONIC社の街灯 右/スマートスマートシティーにおける街灯のオリジナルデザインを提案するUnilumin社

更なる展開を見据える
ライティング・フェア

「香港インターナショナル・ライティング・フェア(秋)」および「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」について、香港貿易発展局のRonald Ho氏とByron Lee氏は次のように語ってくれた。

「今回の展示会では、入場バッジをオンライン化することで、バックヤードの削減に成功し、より多くの区画を用意することができました。また、香港インターナショナル・ライティング・フェアは春にも開催していますが、秋はレジデンシャルとデコラティブに関する照明器具が充実しており、欧米のバイヤーをひきつけられたのではと考えています。来年は、スマートライティングに関するアイテムを今年以上に増やすことで、エコシステムなどのバイヤーも呼び込めればと思います」(Ronald Ho氏)

「トレードショーとしての側面だけでなく、インテリジェンスの共有を表現できればと考えています。コントラクターとエンジニアを呼び込み、新しいマーケットを創出していきたいですね」(Byron Lee氏)
「香港インターナショナル・ライティング・フェア(春)」は2020年4月6〜9日、秋は10月27〜30日、「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」は10月28〜31日を予定している。


左上/「スモールハウスにおけるライティングのあり方」について公演するTino Kwan氏 左下/セミナーの会場風景 右/香港貿易発展局のRonald Ho氏(左)とByron Lee氏
左上/「スモールハウスにおけるライティングのあり方」について公演するTino Kwan氏 左下/セミナーの会場風景 右/香港貿易発展局のRonald Ho氏(左)とByron Lee氏
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TEL/03-5210-7150
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