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世界中の銘木を突き板で届ける

2019.10.07 | INFORMATION

天然木の突き板といえば、北三。そう頭に浮かぶ読者も多いはずだ。多種多様な木材を、わずか0.2㎜の厚さに削り、さまざまな基材と組み合わせ、その本物の木だけが持つ表情や味わいを、人の暮らしや営みの中に広くもたらしている。



そのルーツは、1918年、創業者・尾山金松が北海道・野付牛(現 北見)で下駄屋を始めたことにさかのぼる。ある時、山で見つけたタモの切り株に手斧を入れ、その玉杢の美しさに出会ったことから同社の歴史が始まった。その後、1924年に東京で創業、当初は家具などの装飾用に突き板を販売していた。まだ国産材中心だったが、戦後まもなく海外からの原木買い付けを始め、世界中から仕入れる同社の強みである、「集材力」の土台をつくった。



表面にタモ玉杢を貼った下駄
表面にタモ玉杢を貼った下駄


家具や内装だけでなく、突き板の応用範囲は時代を経るごとに広がりを見せている。楽器や時計、あるいはバッグなどの服飾小物、薄さを生かした照明器具など。また国産高級車「レクサス」のダッシュボードを飾るのも、同社の突き板だ。最近では水戸岡鋭治氏のデザインで、クルーズトレインのトレンドもつくっている「ななつ星in九州」の内装・造作でも採用された。



店舗や商業施設で馴染み深い同社の製品といえば、 1961年に発売が始まった「サンフット」だろう。突き板を特殊なベース材に貼り合わせ、不燃化したものだ。平面だけでなく円柱形や曲面への施工も可能なため、多様な箇所で利用できる。多彩な樹種はもちろん、塗装のカラーリングやツヤの加減など、設計者のさまざまなニーズに対応できるようになっている。



天然木突き板の基材に特殊ベース材を貼り合わせた「サンフット」。豊富な樹種とカラーがそろう
天然木突き板の基材に特殊ベース材を貼り合わせた「サンフット」。豊富な樹種とカラーがそろう


豊かな多様性と環境によって違った表情を見せる奥行きの深さは、自然素材ならではだが、資源には限りもある。同社の人工突き板「ワンダーウッド」は、天然木を積層した素材を突き板にし、安定した柄と供給を可能にし、技術でも省資源を進めている。世界中から原木を集めるネットワーク、天然木を多様な目的に応じて、繊細・精密に加工できる技術力、北三は世界的に見ても、企業としての独自性が高い。木目の美しさから始まった歴史を、時代のニーズに応えながら、今後も紡いでいくことになる。



水戸岡鋭治氏のデザインによる箱根の遊覧船「クイーン芦ノ湖」の特別船室。突き板にデジタルプリントを施すことで装飾性を高めている
水戸岡鋭治氏のデザインによる箱根の遊覧船「クイーン芦ノ湖」の特別船室。突き板にデジタルプリントを施すことで装飾性を高めている

北三

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