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黒崎輝男氏に聞く、コミュニティー形成とテクスチャーの関係性

2018.10.01 | INTERVIEW

1970年の発売以来、インテリアやファッション、自動車の内装などに高感度・高機能マテリアルとして使用され続けている、東レ株式会社のスエード調人工皮革「Ultrasuede®」。今回は、「COMMUNE 2nd(旧COMMUNE 246)」を企画した黒崎輝男さんにインタビュー。コミュニティー形成とテクスチャーの関係性などを追求した、Talking Project特別編をお送りする。

都市の魅力を発信する拠点 「COMMUNE 2nd」

世界的ハイブランドの旗艦店が並ぶ東京・表参道。その交差点近くに、国際色豊かな人々が集う複合施設「COMMUNE 2nd」がある。青山通りに面するのは、世界のタバコ・シガーを販売する「TOBACCO STAND(タバコスタンド)」を始め、海外での知名度の高い、ビーガン料理店「CORI. VEGAN FOODSTAND」や、ドイツ人仲間が出店した、ビールとドイツ料理の店「SCHMATZ」、ジンジャーエールとポテトの店「BROOKLYN RIBBON FRIES」などが並ぶ。


「COMMUNE 2nd」を企画したのは黒崎輝男さん。インテリアショップ「IDÉE(イデー)」の創立者として知られ、1990年代から青山を中心にイベントを牽引し、都市の魅力を発信してきた。その黒崎さんが35年以上通い続ける場所は、米国オレゴン州ポートランド。ごく普通の地方都市が全米No.1の「住みたい街」となり、世界から注目されている。黒崎さんが編集したガイドブック「TRUE PORTLAND」には、発展の原動力となった市民活動が紹介され、本の発行以来、日本人観光客が急増したそうだ。黒崎さんは、「COMMUNE 2nd」というクリエイティブな場を生み出した背景について、次のように語る。


黒崎 ー 「ポートランドを牽引するのは、普通の市民達。行政や大企業の先導ではなく、住民の自発性が街の魅力を生みだしている。ここ『COMMUNE 2nd』も個人のやる気が集まることを期待して、僕らが土地を借りて始めた。世間では落ちこぼれと言われるような人達にも、才能溢れる人は沢山いる。彼らを集めて都市の真ん中で面白いことを起こしたいと思った。その実現には、誰かがリスクを負わないと何も起こせないし、自由にやらせてもらえない。そこで僕が発起人となった」


そこで提案したのは「街に素材感を与える」こと。有名建築家の代表作が並ぶ表参道に、天然木やファブリック、グリーンといったテクスチャーを展開することで、互いの魅力を高めあっている。


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黒崎 ー 「インテリアショップの時代から、常に新しいテクスチャーを探してきた。その中で『Ultrasuede®』は、木でも漆喰でもコンクリートでもない素材感が新鮮。スエード調人工皮革ではなく、空間のテクスチャーを変える、上質な新素材として捉えている。家具だけでなく内装に使ったら面白いと感じ、タバコスタンドではアートパネルのように使った。クリエイティブな場では、テクスチャーも人も、雑多な方が良い。皆が楽しめる空間になれば、新しい発想を引き出すきっかけが生まれる」


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東京・南青山のシェアオフィスや飲食店などの複合施設「COMMUNE 2nd」内でタバコ・シガーを販売する「TOBACO STAND」。什器には、アートパネルの様に「Ultrasuede®」を採用し、重厚感と気品を演出している
東京・南青山のシェアオフィスや飲食店などの複合施設「COMMUNE 2nd」内でタバコ・シガーを販売する「TOBACO STAND」。什器には、アートパネルの様に「Ultrasuede®」を採用し、重厚感と気品を演出している

才能が「出会う場」を演出する 高感度・高機能マテリアル 「Ultrasuede®」

COMMUNE 2ndのすごさは、都市の実験だけで終わっていない。通算で8年以上もスペースを維持し、神田や大手町にCOMMUNEを拡大する計画も進んでいる。南青山はテナント料が日本一高く、飲食店の経営は難しい場所。しかし、COMMUNE 2ndは数百万円の投資で出店可能で、1カ月に数百万円を売り上げる店や、ここを足掛かりに店舗を増やす店も。その多くは飲食店未経験者が運営している。黒崎さんは、そのような才能ある店舗オーナーや新しいデザイナー、クリエーターの発掘に情熱を注いでいる。見出された多くの人は、正統なプロセスを踏んでこなかった異能の人。そうした才能同士が自然と出会う場として企画されたのが、シェアオフィス「MIDORI.so(みどり荘)」である。COMMUNE 2ndの他に、中目黒、永田町にもあり、会員は24時間いつでも、どこでも使うことができる。ここの壁面にも、赤や青、緑などさまざまな色の「Ultrasuede®」が使われ、空間に変化とやわらぎを与えつつ、会話を聞きやすくする吸音・調音効果も発揮している。


同敷地内に位置するシェアオフィス「みどり荘2」。パーティションには、「Ultrasuede®」を採り入れた。吸音効果だけでなく、表面温度は寒い時に暖かく、暑いときに涼しくなり、ブース内に快適な環境をもたらす
同敷地内に位置するシェアオフィス「みどり荘2」。パーティションには、「Ultrasuede®」を採り入れた。吸音効果だけでなく、表面温度は寒い時に暖かく、暑いときに涼しくなり、ブース内に快適な環境をもたらす


東京・永田町に位置するシェアハウス「みどり荘3」の仮眠スペース。本棚が一体となったベッドには朱や白、黒など、さまざまな色の「Ultrasuede®」が貼られた。多彩なカラーバリエーションを持つ
東京・永田町に位置するシェアハウス「みどり荘3」の仮眠スペース。本棚が一体となったベッドには朱や白、黒など、さまざまな色の「Ultrasuede®」が貼られた。多彩なカラーバリエーションを持つ


同オフィスでは、吸光効果が見込めることからベッドブース内部にも「Ultrasuede®」を採用した。また、パンチングやキルティングなどの凹凸のある表面の加工も可能だ
同オフィスでは、吸光効果が見込めることからベッドブース内部にも「Ultrasuede®」を採用した。また、パンチングやキルティングなどの凹凸のある表面の加工も可能だ


黒崎 ー 「自分はインテリア業界にも飲食業界にも属さず、自由なことをやりながら都市の可能性を追求してきました。国連大学前の『Farmer’s Market @ UNU』や、自由を獲得するための学びの場『自由大学』など、情報と人とコンテンツをマネジメントすることが面白い」


都市にテクスチャーを描く黒崎さんの挑戦は、これからも続いていく。


Ultrasuedo®は東レ(株)の登録商標です。

黒崎輝男
1949年東京生まれ。家具ブランド・イデーの創始者。オリジナル家具の企画販売・国内外のデザイナーのプロデュースを中心に「生活の探求」をテーマに生活文化を広くビジネスとして展開。2005年、流石創造集団株式会社を設立。「246Common」「みどり荘」「COMMUNE 246」などの「場」を企画し、新しい価値観で未来の社会を模索している。

東レ ウルトラスエード事業部

  • TEL. 東京支社 03-3245-5401 / 大阪本社 06-7688-3373

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