Loading...

id+ インテリア デザイン プラス

インテリアデザイン・建材のトレンドを伝えるメディア Presented by 商店建築

  • Home
  • 記事を読む
  • INTERVIEW
  • ブルワリー&レストラン「カールヴァーン」に見る レストランにおけるトイレ空間の在り方

ブルワリー&レストラン「カールヴァーン」に見る
レストランにおけるトイレ空間の在り方

2018.04.16 | INTERVIEW

近年、商業空間において、トイレやパウダールームの価値や位置付けが見つめ直されている。単に用を足すだけの場所としてでなく、インテリアの世界観を引き継いだデザインや、気持ちを切り替えられる仕掛けが施され、店舗の付加価値となるようなトイレ空間が生まれている。埼玉県飯能市にある、「BREWERY & RESTAURANT CARVAAN(ブルワリー&レストラン カールヴァーン)」(以下、カールヴァーン)においても、オーナー、設計者の店舗に対する考え方を反映したトイレ空間が計画された。同店を経営するFAR EAST(ファーイースト)代表の佐々木敏行氏、設計を手掛けた藤井デザイン事務所の藤井利彦氏に、店づくりのストーリーと、トイレ空間のポイントを聞いた。

海外の様式を融合した、非日常空間

FAR EASTは、食品や雑貨の輸出入、飲食店経営を行う企業であり、ドライフルーツ店「FAR EAST BAZAAR(ファーイーストバザール)」を全国に11店舗展開している。同系列店の1店舗目から設計を手掛けているのが藤井氏だ。カールヴァーンは業態は違えど、これまでの店舗づくりと同じく、佐々木氏のイメージするテイスト、キーワードを元に空間が立ち上がっていったと言う。「私から藤井さんに最初に伝えたのは、“メソポタミア”、“アラビアン”、“チベットの寺院”、“アンリ2世様式”、そして“鹿鳴館”と“迎賓館”といったテーマでした。中東やヨーロッパ始め、さまざまな国で触れてきた素材やデザインを融合し、新しい様式として生まれ変わらせています。ここを単なる飲食店ではなく、大人の社交場となるような空間にしたいという思いがありました」(佐々木氏)


藤井デザイン事務所・藤井利彦氏( 左)とFAR EAST・佐々木敏行氏
藤井デザイン事務所・藤井利彦氏( 左)とFAR EAST・佐々木敏行氏


中央に吹き抜けを持つ2階客席。ペンダントライトはオスマン帝国の宮廷で使用されていたものを復刻。格子窓越しに、眼前に広がる渓谷を臨む
中央に吹き抜けを持つ2階客席。ペンダントライトはオスマン帝国の宮廷で使用されていたものを復刻。格子窓越しに、眼前に広がる渓谷を臨む


埼玉県飯能市の川原沿いの崖上に新築された
埼玉県飯能市の川原沿いの崖上に新築された


カールヴァーンが建つのは、飯能市の中心を流れる入間川のほとり、その流れを見下ろす崖の上だ。周辺は緑に囲まれ、季節の移り変わりと共に、川辺の景色や表情を変える対岸の木々を見ることができる。かつては結婚式場があった土地で、長い間手付かずとなっていた場所をFAR EASTが岩盤工事から計画し、ブルワリー、レストラン、ワインセラーを併設した建物を新築した。建物内は川のある崖に向かって開口部が設けられ、昼は明るい外光が取り込まれる。大きな吹き抜けやゆとりのある客席レイアウトも相まって、開放感のある空間が広がる。シタン材ヘリンボーン貼りの床、木製の手すりや家具は温かみを生むと同時に、骨材入りのダークカラーの左官、部分的に金色の装飾が施された壁面と一体となって、重厚な雰囲気を醸成している。また、ホールに置かれるテーブルやイス、ソファ、照明といった家具はほぼ特注品だ。


「海外のさまざまな製品を輸入してきたノウハウやネットワークを駆使し、エジプトやトルコ、上海の職人にオリジナルデザインの家具を制作してもらいました。家具だけでなく、躯体以外のほとんどの建材を輸入しています。一方で、施工や仕上げは地元の職人に分離発注して構築しました。本物の素材とこだわり抜いた造作を実現していく中で、大変ですが職人たちも刺激を受け、楽しみながらプロジェクトに取り組んでくれました」(佐々木氏)

地域活性化へつながるレストラン

「どこの席に座っても川辺の風景が見える客席レイアウトを考えながら、一方で存在感のある家具や素材を共存させ、各所に魅力のある空間づくりを目指しています。佐々木社長が思い描く社交場としての非日常感を、仕上げとスケール感それぞれで表現しました」(藤井氏)
 彫金を用いたシャンデリアやテーブルランプ、立体的な装飾をあしらったテーブル、オリエンタルな造形が取り込まれたイスなど、海外の様式を漂わせつつも、ここでしか出合えないデザインが生まれている。


「大人の社交場として、この土地に新しい文化を生み出すと同時に、地域に溶け込み盛り上げていくことも狙いです。ブルワリーでつくられるビールは、店の近くの畑で採れるホップを原料としている他、飯能で生産される麦を用いるなど、産業的な結び付きも生まれている。お客様は地域外からわざわざ訪れる方がほとんどです。カールヴァーンにより地域が活性化することで、日本の中山間地域におけるエリア再生のモデルケースとなる可能性も感じています」(佐々木氏)


その言葉に強い信念とリアリティーを感じるのは、家具などのディテール、オペレーション、それを盛り立てる周辺のスペースまで意識を巡らせ、ここだけの空間体験を創出しているからだろう。

省スペースで機能を満たすトイレ設備

カールヴァーンのレストランは二つのフロアで構成され、それぞれにトイレが設けられている。1階に男性用と多目的トイレ、2階に女性用と同じく多目的トイレが配された。男女をフロアで分けたのは、トイレを利用する時に、異性とすれ違う機会を少なくする狙いがある。各トイレの扉には、男性用、女性用、多目的といった用途別のサインが、中東のテイストを感じさせるグラフィックで示されている。これはレバノン共和国のベイルートで、佐々木氏が出合ったトイレサインを模したもので、ホール空間の雰囲気を、一般的なピクトグラムの男性・女性用のサインで壊したくないという思いも込められた。インダストリーな印象の武骨な鉄枠が造作された引き戸を開けると、グレーを基調としたトイレ空間が広がる。


2階女性用トイレ。タンクレストイレを採用することで、ゆとりある空間を実現
2階女性用トイレ。タンクレストイレを採用することで、ゆとりある空間を実現


必要機能がコンパクトにデザインされた多目的トイレ。1、2階ともに、多目的トイレを設置している
必要機能がコンパクトにデザインされた多目的トイレ。1、2階ともに、多目的トイレを設置している


1階男性用トイレの前室。黒レンガやシタン材のヘリンボーンを店内から連続している。サインは、レバノン共和国で一般的にトイレを表すグラフィックを採用
1階男性用トイレの前室。黒レンガやシタン材のヘリンボーンを店内から連続している。サインは、レバノン共和国で一般的にトイレを表すグラフィックを採用


1階男性用トイレ。グレートーンでシンプルにまとめている
1階男性用トイレ。グレートーンでシンプルにまとめている

「トイレの扉は、佐々木社長からの『無機質で重厚な印象にしたい』という要望を受けてオリジナルでデザインしました。内部空間は、ミラーにビンテージ感のあるスチールフレームなども用いていますが、極力シンプルなテイストでまとめています」(藤井氏)
男性・女性用ともに便器はLIXILのパブリック向けの機能的でコンパクトな製品が導入された。特に省スペースのタンクレストイレは、ユーザーに空間のゆとりを感じさせる。一方、多目的トイレでは、介助者がサポートしやすい折りたたみ式の手すりや、機能的な周辺設備が取り込まれた。更に、タンク付きの便器には、オストメイト配慮をしていて、便器鉢内で汚れ物を水洗いできる「ケアサポート水栓」が設置されている。

気持ちをリセットするためのトイレ

ダークな色調の空間に白いシンプルな設備が並ぶトイレは、多様な文化のレイヤーが織り込まれた客席エリアとは異なる雰囲気だが、そこには同店におけるトイレの位置付けが関係している。


「さまざまな素材や家具を用いているのはテーマパークにしたいからではなく、あくまでも大人の社交場として、新しい文化を発信する場をつくるためです。一方でトイレは、気持ちをリセットできる場所にしたいと考えました。女性に話を聞くと、レストランにおいてトイレを使う理由は、化粧直しよりも息抜きという答えが多かったのも理由です」(佐々木氏)


 近年の商業空間におけるトイレ、パウダールームのインテリアは、不特定多数のユーザーが満足するホスピタリティーや、施設のターゲットに向けて特化したデザインを表現した空間が増え、それが施設の付加価値となっているのは事実だ。一方でカールヴァーンは、客席空間での体験に重きを置き、その世界観を壊さないながらも、気持ちを切り替える場所とすることで、より空間が引き立つよう配慮されている。仕上げやデザインに注力した空間も、機能的かつシンプルに設備をまとめた空間も、どちらも店舗全体のクオリティーを向上させるための仕掛けであり、オーナーや設計者が目指す店づくりに沿って選んでいくべきだろう。

「ブルワリー&レストラン カールヴァーン」1階。手前のガラスの奥は、ビールを醸造するブルワリー。壁面は、実際に上海・フランス租界で使用されていた黒レンガ貼り


1F 男性用トイレ
1F 男性用トイレ


2F PLAN
2F PLAN

NEW PUBLIC TOILET HL 〜使う人の心と体に寄り添うパブリックトイレシリーズ〜

LIXILが「『人』への思いを形にした、『人』に寄り添うパブリックトイレ」をコンセプトとして提案する製品群は、アプローチのしやすさと、建築との調和を追求したデザインが特徴だ。人が触れる部分に曲線や曲面を多用。使い心地と共に、見た目にも柔和な印象を与える。一方、建築に接する部分は直線的なつくりとし、床や壁にすっきりとフィット。無駄な要素をなくし、素材やカラーを統一することで、空間との一体感や清潔感を演出する。車椅子のフットレストを気にせず使えて、ブース内での動作がしやすいコンパクトな壁掛け大便器。大きな荷物を置きやすい洗面カウンター。清掃性が高い便器の設置方式など、機能面にも多様な利用者への細かな配慮が凝縮している。商業・公共空間での時間、空間体験を妨げず、時に盛り立ててくれるだろうデザインだ。


pic10


①.足元に空間を確保した壁掛け便器は、車椅子での利用や清掃性に配慮したデザイン。コンパクトな奥行きも特徴 ②.直線的なフォルムにより建築へフィットする一方、人が触れる部分には柔らかい曲面を取り入れた手すり ③.継ぎ目をなくした一体形の洗面カウンター。壁掛け式の製品は、足元にも空間が生まれ、車椅子でも利用しやすい ④.またぎやすく近付きやすいタレ受け、低リップ、目隠しなどを追求した、センサー一体形ストール小便器
①.足元に空間を確保した壁掛け便器は、車椅子での利用や清掃性に配慮したデザイン。コンパクトな奥行きも特徴②.直線的なフォルムにより建築へフィットする一方、人が触れる部分には柔らかい曲面を取り入れた手すり③.継ぎ目をなくした一体形の洗面カウンター。壁掛け式の製品は、足元にも空間が生まれ、車椅子でも利用しやすい④.またぎやすく近付きやすいタレ受け、低リップ、目隠しなどを追求した、センサー一体形ストール小便器

トイレ用音響装置 サウンドデコレーター 〜心地良い音がトイレの時間を変える〜

トイレを利用する時に気になる「音」の問題を解決するべく開発された、トイレ用音響装置「サウンドデコレーター」。LIXILの同シリーズにおいて、新たな技術を取り入れた最新版が発売された。開発にあたり、改めて多様な行為時の音のサンプルを分析し、利用者が最も気になる音の周波数帯を研究。その周波数帯をマスキングするサウンドが取り込まれている。音の種類は「せせらぎ音」と「せせらぎ音+鳥のさえずり」の2種類を搭載。電子楽器の世界で最先端の音の技術を有するローランドと協働し、自然環境から採集した音を独自の手法で合成。マスキング効果を高めながらも、人が心地良いと感じる音が追求された。従来よりも高音質のサウンドで、リラックスしながら心地良く過ごせる、トイレの新たな付加価値となる製品が誕生した。

さまざまなトイレ空間にマッチするシンプルでコンパクトなデザイン。人が近付くと自然に音が流れ始め、離れると止まるオートタイプ
さまざまなトイレ空間にマッチするシンプルでコンパクトなデザイン。人が近付くと自然に音が流れ始め、離れると止まるオートタイプ


株式会社LIXIL お客さま相談センター

  • 営業時間 月〜金 9:00〜18:00 土日祝 9:00〜17:00
  • 定休日 GW、年末年始、夏期休暇
  • TEL. 0120-179-400
  • URL. www.lixil.co.jp

RELATED ISSUES

一覧に戻る

PAGETOP