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家具の背景を伝え、新たな交流を生む「国際家具デザインフェア旭川(IFDA)2017」

2017.07.18 | REPORT

「旭川家具」で知られる北海道・旭川にて、2017年6月21日〜25日の5日間、「国際家具デザインフェア旭川(IFDA)2017」が開催された。明治期以降、木工の職人やメーカーが集積し、家具の産地として発展してきた旭川。ピーク時の約300社から減少したものの、市内及び近郊には、現在も100社強の家具メーカーや工房が点在している。



旭川では、毎年開催している家具フェアを2015年から「ASAHIKAWA DESIGN WEEK(旭川デザインウィーク)」と名称をリニューアルし、「デザイン」をキーワードにコンテンツを更新。積極的に地域内外に向けて、発信を続けてきた。



今回開催されたIFDAは、旭川家具の活性化のために1990年に始まり、3年に一度の頻度で催される「国際家具デザインコンペティション」をメインとするフェアだ。今年は10回目の開催という節目年にあたり、その入賞入選作品展を中心に、各メーカーが新作を発表する「旭川家具エキシビション」、家具やデザインにまつわるトークイベントや展示、オープンファクトリーなどが市内各所で行われた。



今年のコンペティションには世界30カ国・地域から683点の応募があり、画像審査を経て選ばれた25点を、一部旭川の家具メーカーの協力を得て試作品を制作。五十嵐威暢氏、川上元美氏、深澤直人氏ら、国内外から迎えられた8名の審査員により選ばれた入賞入選作品が旭川デザインセンター内の特別ブースに並んだ。



ブースデザインを手掛けたのは、北海道を拠点とする建築家・五十嵐淳氏だ。「人の生活に寄り添う家具を主役とする場なので“家”のようなスケールがふさわしいと考え、約30坪の家のような広さの白い床と、2.1mの家のような高さの白い天井で、“透明な家”をつくりました。また、極薄の布がたゆたう様子は、旭川の美しい雪原風景も想起させます」(五十嵐氏)

会場で行われたデザイナーによるプレゼンテーション会では多くの観客が囲む中、入賞入選者がそれぞれ自作のコンセプトや制作背景を発表した。



五十嵐淳氏デザインによる入賞入選作品展ブース
五十嵐淳氏デザインによる入賞入選作品展ブース


自作をプレゼンテーションするミッコ・ハロネン氏
自作をプレゼンテーションするミッコ・ハロネン氏


コンペの大賞であるゴールドリーフ賞に選ばれたのはフィンランド人デザイナー、ミッコ・ハロネン氏による「Korento(コレント)」。

2010年からデザインを考え始めて以来、改良を続けてきたというスタッキングアームチェアは、「デザイナーの誰しもがデザインしたいと思うイス」と評された。



ゴールドリーフ賞「Korento」(ミッコ・ハロネン)
ゴールドリーフ賞「Korento」(ミッコ・ハロネン)


シルバーリーフ賞は、デザイン事務所に勤める倉島拓人氏が卒業制作としてデザインした「trine(トライン)」。曲げ木技法を使った構造と造形の大らかさが評価された。



シルバーリーフ賞「trine」(倉島拓人)
シルバーリーフ賞「trine」(倉島拓人)


ブロンズリーフ賞は、タイのラッティー・パイサーンチョシリによる「Sora(ソラ)」と平井健太氏デザインの「CJ2 legless chair(CJ2レッグレスチェア)」。「Sora」は「瞑想のためのイス」を考えたもので、立ち膝の正座のような姿勢で腰掛ける。

「CJ2レッグレスチェア」は、柔らかく家具には向かないとされているスギ材を使った座イスで、1.5㎜厚の単板を15枚重ね合わせて曲げる技術により、自由な曲線を実現している。



ブロンズリーフ賞「Sora」(ラッティー・パイサーンチョシリ)
ブロンズリーフ賞「Sora」(ラッティー・パイサーンチョシリ)


ブロンズリーフ賞「CJ2 legless chair」(平井健太)
ブロンズリーフ賞「CJ2 legless chair」(平井健太)


メープルリーフ賞は、オーストラリア人デザイナー、ニック・レニー氏による「kiko chair(キコチェア)」。「包み込むこと」を起点とし、アメリカンメープルの白木の美しさと職人技法を生かしたイスである。



メープルリーフ賞「kiko chair」(ニック・レニー)
メープルリーフ賞「kiko chair」(ニック・レニー)


家具メーカー、カンディハウスの創設者でありIFDAの立ち上げに深く関わった故・長原實氏の名を冠し、今年新設された長濱實賞は、佐藤邦彦氏のベンチ「GOL(ゴル)」。丸太を二つに割ってそのまま合わせたような荒々しさをも感じさせる表情は「木製家具の原点に立ち返るもの」として、伝統あるコンペに新しい風を招き入れる存在となった。



長原實賞「GOL」(佐藤邦彦)
長原實賞「GOL」(佐藤邦彦)


また、コンペ受賞者表彰式と同日、市民活動交流センター・ココデにて、旭川市の「IFI インテリア宣言」調印式が行われた。

IFIは「国際インテリアアーキテクト/デザイナー団体連合」の略で、インテリアデザインの先進的な取り組みをしている都市に認められるもの。IFDAや旭川デザインウィークなどの活動が評価され承認されたもので、国内では名古屋市、神戸市に次ぐ3都市目の宣言で、これを機に「家具の町」としてのますますの発信が期待される。



IFI Steve Leung次期理事長と旭川市西川将人市長による調印式の様子
IFI Steve Leung次期理事長と旭川市西川将人市長による調印式の様子


その他、各メーカーの家具制作の現場を公開するオープンファクトリーや、椅子研究家・織田憲嗣さんが収集してきたイスと生活用品のコレクション「織田コレクション」に関する展示、トークショーなど、さまざまな催しが市内及び近郊各地で開催され、地域内外からインテリア関係者などが訪れた。



家具メーカー、アルフレックスの旭川ファクトリー見学の様子
家具メーカー、アルフレックスの旭川ファクトリー見学の様子


北海道立旭川美術館で開催された「デンマーク・デザインの魅力 織田コレクションと旭川」
北海道立旭川美術館で開催された「デンマーク・デザインの魅力 織田コレクションと旭川」


初日のオフィシャルパーティーには、900人が集まった
初日のオフィシャルパーティーには、900人が集まった


5日間のイベント総入場者数は、1万9500人。これは3年前のIFDA2014の1万1996人比べて1.6倍の増加率となった。

デザイナーや売り手は、家具が生み出される現場を体験することで、そのストーリーと込められた技術を理解することができる。地域のつくり手は、国内外から訪れる多くの人から新たな発想を取り入れることができる。そこで生まれた新たな交流は、培ってきたものの価値を継承しつつ、次なるステージへとつながっていく。旭川では、IFDAやADWをきっかけとして、その相互循環が生み出されている。それが今後もどのような形で発展し、家具デザインに、そして地域に還元されていくのか、引き続き注目したい。

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国際家具デザインフェア旭川開催委員会

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